第六話

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第六話

一年の約束、典君がアメリカに行くことでそれは解消されるのかなって思ってた、でも、何でもあの意地の悪そうなおじさん?彼の目を欺くためには、まだ結婚生活はしなきゃいけないな、なんてぽつりと言われたんだ。 彼は、何を考えているのだろう?私とのこの先の事なんてないのに…… やめた、やめた、悩んでもしょうがない。もしもの時は早めに対処。わかってるでしょ、一人じゃないと無理なこと。 鍵を開けた、どさっと物が落ちる音。 「ひえー、あ、返事来てる、よかった、あと、どっかに、ベストがあったんだよな」 ピンポーン。 誰だ? のぞくと知らない男、新聞の勧誘かな、まだ明かりつけてないし。 五時過ぎ、外は暗くなっていた。 男がいなくなってから、明かりをつけた、カーテンは開けたまんまだったからいる間だけ閉めた。 「えーっと、あった、袋、えーい、これはみんな持って行っちゃお。後は買い物してと」 バッグを持って外へ出た。隣の部屋の前に知らない男が携帯で話している、知らないふりで、カギをかけようとした。 「ささきあやさん?」 返事はしなかった、そのまま通り過ぎようとして、後ろから左手を取られた。 「ビンゴ!」 おおきく息を吸い込んだ。 「キャー助けて!火事、火事―!」 「うわー、黙れ!」 後ろから羽交い絞め、口に手をやる。 「兄貴!」 「お前、そのカギで、部屋、開けろ、足押さえろ!」 二人の男が階段を上がってきて、そのまま部屋に押し戻された。 「静かにしろよ!」 タオルで口を縛られ、体に腕をパンストで固定られ、足も縛られた。 スマホを見ている。ロックはかけてあるし、写真は昨日すべて取り出してある、よかったー。 「ジジイ生きてんのか、誰だこれ?」 ムービーを見ている。おじいちゃんのこと知ってる? なんか男たちと話してる声、どっかで聞いたことのある声、誰だった? 思い出せ! 携帯の中には、 おじいちゃんと、お母さんの先生、それとこの間の飲み会の。 待ち受けは、えっちゃんと、ノンちゃんだし、彼は写ってない。 「俺、覚えてる?」 しらない、首を振った。 「そうか、結構立ってるもんな、いい女になったよな」 そういって、私の顔をあげた。 白髪頭のじじい。若作りしてるんだろうけど、似合わない服装。 そしてタバコくさい。 「あゆみ殺したの、俺、その前に―これ、俺が切っちゃったー」 目の前に、犯人、なんで、捕まったんじゃないの! 「んーんんーんんーーー!」 母さんを返せ!私の手返せ―――!!! 「何言ってっかわかんねえなー、まあこんなところに住んでるんだもんな、大したことねーか?」 「兄貴、金目のもんは何もありません」 財布の中を見ている。 「しけてるなー、買い物のメモかよ、なあ、ジジイから何か預かってねえか、時計とか、指輪とか」 あのアクセサリーだ。 「こっちも何もありません」 鞄の中から使い慣れた義手を出した。 「売れるかー?こんなこきたねーの」 「でも、顔はいいですね」 「あたりめーだ、俺の惚れた女のガキだ、売れるさ、まあ、いいように使うさ」 売る?使う?何に? 「結婚してる?ってもできねーか。男もなさそうだし、じじいは施設か、相変わらずこいつら、本好きなのか、ほうほう色気ずいて、こんなのも見てんだな?」 本棚を見ている。 どうせ、ここには戻ってこねえんだ、みんな売ればお前らのこづかいぐらいにはなるだろ。そう言っている。 え?戻ってこない?どういうこと? スマホがなった。 ちっと舌打ちをしてから取った。 「へいへいコッちは順調だよ、おい、お前ら、車に乗せとけ、はい、イヤーそういう事じゃ」 暴れて、カバンや袋をわざとひっかけて散らかした、カギだけは、彼の家のも、会社のもある!足でけった。 「さっさと連れてけー!」 どすの利いた声、怖い! 車に乗せられた、もうダメだ。 ただ、さっきの騒ぎで人はいた、見ている人は大勢いる。 忠典さん!助けて!
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