第六話

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「まったく、早く帰ってくればこれだし、何やってんだ?」 携帯はなっているがでない。 「ハー、腹減ったぞ、シャーない、残ってるのやっちまうか」 仕事の書類に夢中になっていて時間を忘れていた、ふと見た時間。 時計は十時、いくらなんでも遅すぎる。 車に乗ってあいつのアパートへ。明かりはついていない、けど、カーテン?おかしい、あいつは開けておいて・・・! 慌てて階段を駆け上った。 ドアノブに手をかけようとして、手が止まった。 開いてる? ぞくっとした、体中の血がすべて足元からなくなるような感じ。 ! 中に入り、明かりをつけた。 「亜矢―、くそ―!!!」 テーブルの下に散らかった、手紙やダイレクトメール、そして、義手が転がっていた。 「では、奥様は、ここを別邸にされていたんですね」 「はい、今日は、祖父に頼まれていた手紙と、ベストなんかを取りに行くと、夕方に来たはずなんです、夕飯の買い物をついでにしてくるからと」 「そうみたいですね、スーパーに何か頼んであるのか引換券です、クリスマスですからね」 「ケーキか」 横から覗き込んだ男。 「お宅は?」 「顧問弁護士の戸田と申します」 「そうですか、何か心当たりは」 「いえ」 「おかしいと思われたのは、ここに来てからですか?」 「はい、妻は左手がありません、その義手を置いていくことは考えられません」 義手はフックのついている方。 鑑識が、腕から指紋をとろうとしている。 「すみません」 「何か取れたか?」 こそこそと何かを話している。 「男性が三人、それも、指紋を取られるような前科者です」 ちょっとよろしいでしょうかと、車に乗せられた。 この男、ご存知ですか?パソコンの中の男 「いいえ」 「佐藤元、亜矢さんの母親を殺した男です」 この男か? 「ハー?なんでこいつがこんな所にいるんですか、殺人犯でしょう!」 「落ち着いて、裁判で減刑になったんです。悪いのは亡くなった方にも非があると」 「死人に口なしか、相手の弁護士、見つけてこてんぱにしてやる」 「まあ、まあ、今は彼女の身の安全を考えます」 「あとの二人は」 「三国組の工作員ですね」 「三国組ですって?」 「ええ、なにか?」 「何かって、やくざじゃないですか?彼女を見つけてくださいよ!すぐに見つけて下さいよ!」 「今、これを流しましたので、すぐにでも見つかると思います」 義手を持ったままぼーっと立ち尽くす忠典。 「緒方、悪いな、目を離さないでおいてくれ」 「はい、これはもう持って帰ってもいいのでしょうか?」 「ああ、忠典、忠典!しっかりしろ!お前の代わりに亜矢ちゃんが連れていかれたんだぞ」 「わかってる、わかってるけど、なんで!」 「ほら、ちゃんと見ろ、彼女の物、ないものはないか?」 壊れたスマホ、財布、ベスト、セーター、手紙類。 「カギ、部屋は空いていた、カギは何処だ?」 三人で探す。 「あった、靴の中」 「靴?あいつ裸足で」 「それも持って行け、いいな部屋から出るな!脅迫されるようなことはない、もし、それをして来たら墓穴を掘る。お前は待機、しっかり亜矢ちゃんの帰りを待て、いいな、聞いてるか!緒方頼んだ」 「はい、社長、帰りましょう」
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