第六話

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真っ暗な部屋のベッドに座り、亜矢の手の形をした、義手に光る、結婚指輪を見ていた。 あいつの頼みごとなんか聞かないで、ここに縛り付けておけばよかった。 ”一年で離婚かー、すげーの、ねえ、あのアパート解約しないよ?帰る所ないんだからね。” くそっ!そんなつもり、はなからねえんだよ! 「亜矢……」 立ち上がって、ドアを開けた。 「ほんとですか、いつ、どこで、はい、はい、わかりました、ありがとうございます」 こっちを見る緒方。 「何かあったのか?」 「社長」 「何があったんだ、言え!」 戸田先生が、犯人の写真をばらまいて、見たり、話を聞いていないかあちこちに聞いてるんです。 「それで!」 「八百屋が亜矢さんから注文をもらっているとき、後をつけている男達をみたんだそうです」 「それだけか?」 「…… じつは」 「なんだ?」 綺麗な女性を何度か見たと。 「女?誰だ?」 わかりません、ただこのビルや食堂では見たことがないと言ってました。 「くそー」 ガツンとテーブルをけった。 「落ち着きましょう、今は、できる事をしませんか?」 「これは?」 テーブルの上にある書類とノートパソコン。 「三国組と聞きましたので、智典さまの方を調べようかと」 …智典… 「お前何か知っているのか?」 「それは社長の方がご存知ではないんですか?」 どういうことだ? 「薬のことを調べていたのではないんですか?」 それは親父の方で・・・。 「え?私はてっきり息子たちの方だと、嫌でも、確かに・・・」 「そうだ、くそ、俺のじゃ、なあ、これ亜矢の携帯からアドレスとれねえか?」 「無理ですよ、朝になって、持って行かないと」 「チッ、そうだ!典、あいつと仲良かったのって」 「典道様ですか?それなら東雲課長の御子息と仲がよかったじゃないですか」 すぐに課長に電話した。 こんな時間にすまないと今置かれている状況を簡単に説明した。 「ハア?冗談」 「冗談でこんなこと言えるか!頼む、典道のアドレスか、電話番号が知りたいんだ、聞いてくれないか?」 わかりました一度切ります、すぐ折り返します。 そう言った。 待っている時間が長かった。 電話! 「今メールで送らせます、社長、大丈夫です、亜矢ちゃんは強い子ですから」 「ああ、ありがとう、息子さんたちにもありがとうと言ってくれ」 すぐにメールが来た、電話 起きていてくれよ。 「もしもし、誰?」 「典!お前!」 亜矢の誘拐。智典と三国組の交流その証言、矢継ぎ早に聞いた。 切ると、すぐに、戸田の所へ。 「証言は」 「アイツがする、帰国してでもしてくれるそうだ」 「そうですか、緒方君は」 「隣にいる」 変わってくれと言い、何やら話している。 「わかりました、すぐに調べます」 俺に代われと言ってスマホを取りかえした。 「行って来る」 「ダメだ、ちゃんと、目の前に叩きつけられるものを用意しよう」 「あいつだってわかっているのにか!」 「でも、亜矢さんを連れ出したのは違う人です、そうでしょ、焦りは禁物です、いいですか、私は、あの方にお会いしてきます」 「あの方って、まさか」 「まさかです、お力をお借りします」 「待て、俺も行く!」 「はー、いいんだな」 「ああ、俺の嫁だ、俺が助ける!」 「わかった、二十分でそこへ行く」
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