第七話

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第七話

車の中で目隠しをされた。 耳にもかかっていて、音が聞き取りにくい。 背中をどんと押されたり、歩けって言われたりしたんだから車から降りたのは間違いない、ここは何処だろう? そんなに寒くない。 クン、この匂い、どこかで…居酒屋? お酒だけじゃなくて、食べ物や、いろんな匂い、トイレも近いんだろうな、芳香剤の匂いがするような気がする。 耳を澄ませる、たまに、パンと言う音が聞こえる。クリスマス、クラッカーの音? 何とか動けないかな、たぶん、今は一人だ、背中のこれはなんだろう、結構重い、横になれるかな、そのまま倒れてみた、何も言わない所を見ると、ここには私一人だ。 顔を、床と思われる地面に擦り付けた。タオルが動いた、そのまま擦り付け続けた。 すると音が耳に入ってきた。 女性の叫び声、笑い声、キャーと言う声に、いらっしゃいませの声が聞こえる。 やっぱり、飲み屋。 真っ暗、片目が見えた、顔を動かして何とか片方だけ目隠しをずらしたんだ。 目の前は、ドア、薄い光が入っている、それがたまに途切れる、人が通るんだというのがわかる。 後ろを見た、お酒、こっちは水、何か、切るものはないかな。 「秘書は!」 「つながんねー、くそったれ」 執事の大沢さんには連絡はした、こんな時間だ、あってくれるかははからないと。 「たたき起こしてやる」 「ここは頼みに行くんだ、した手に行かないと、亜矢さんが危険にさらされる」 「わかってるよ!」 漫画ならさ、ガラスの破片で、ロープを切って脱出なんだろうけど、これだけ人通りが多いとな。 パタン、人が入ってきた、まずい。すわり直し下を向いた。 「いやーね、また連れ込んで、ちょっとごめんね。やったー、結構入ってる」 ガサガサと音がする。 「ちょっとごめんね、一服させてね」 女はどこかに座ると煙草に火をつけた。 「窓開けるね」 スーッと冷たい風が入ってきた。 また、ドアが開いた。 「あーいた、もう、今日は忙しいんだからさー」 「一服ぐらいさせなさいよ」 「あっちで吸えよ」 「いやよ客の前でなんか」 「みんなしってるよ」 「えー?」 「エーじゃねえ、ほら行くぞ!」 「ねえ、あれ、死んでるの?」 「そう、化けて出るかもよー」 「きゃー」 バタン。 あいつ、そうだ、若い男の方だ。 赤い色がドアのそばに落ちているように見えた。 「タバコ」 そう思ったら、体が動いていた。皿に置かれた物は消えないでいた。その上に、体を当てた、熱い、イッテー。もうちょっと! パンストは熱で、溶けた。 あとは、ふーんーー!!! ビリリ ハー、行けるかな、んー、取れそう、はー、取れた。消えた?フー、お、まだ行ける。 足も溶かした。 火傷、こんなの朝飯前。 窓・・・おしり、おっきいんだよな、でもここは一階とは限らない。よし。 お酒のケースに足をかけ、片手でケースを持ち上げ、階段を作った。 お?やり―、二階だ、せいぜい、ねん挫ですむかな、ただな、この窓、出れるかな? カタカタと音はする。 トイレにあるような小窓、小さなハンカチ一枚分ぐらい、でも両方が開けば、何とかいけそう。 ア~内側には外せないか、外ならいける? カタン、何とか一枚外した。 固いなー、いっ! タオルは、二枚ある、一枚を左手に巻き付け、パンストで結んだ。 ガサッと、何かが落ちた。 「お金?あ、さっきの人、おいていったんだ、悪いことしたんだ、貰って行く」 んーガタン。 うわーー!WWWWW―! ガシャン! マジ―! あーあ、やっちゃったー、落としたよー。 シーンとしてる? 「よっしゃー、それでは、脱走いたします。なめんなよー!」
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