第七話

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押したボタン。大きな屋敷の呼び鈴が遠くで静かな中に響くのが聞こえた。 「お待ちしておりました」 「夜分申し訳ございません、もう一人増えたのですが」 一歩前へ出た。 「忠典さま!」 「すまない、こんな時間に」 「お入りください、旦那様は渋っておいででしたが、どうぞ、こちらへ」 執事の後ろをついていく。 大きなドアの前、ここでお待ちくださいと言われた。 少ししてドアが開いた。 「ありがとう」 「すまないな」 「いえ、では」 中に入ると、部屋の中は暖かく、ガウン姿の男性が、窓辺に立っていた。 「忠典、智典の仕業とは本当か?」 「まだ全部じゃないが、証拠はある」 ばさりとテーブルの上に書類を投げつけた。 そこには、アメリカに行く前に典君が調べ上げていたもの。 彼にしてみればたった五歳しか離れていない人が父親なんだ、調べたところで、北条の父親たちは子供のしたことでまたもや闇に葬り去ることができただろうが、今はみんなが大人になり、やるべきことはみな通じている。 「戸田、それで」 「はい、三国組の組長は好きにしろと」 「そうだろうな」 振り返ったその男は、八十にしては若い男だった。テーブルの書類を取るとイスに座った。 「警察は?」 「頼んでおりますが、信用はしておりませんので」 「そうか」 パンパンと手を打った。 さっき執事が、スマホを持ってきた。 「私だ」 んー、もう少し―。 片手で、体を支えていた、足が、ちょっとの隙間にはさまって、安定しそう、そうしたら、下に落ちればいい。もうちょっと右に行きたいんだよなー。 「おい、なにしている!」 見つかったー‼ 「うわー!!!」 手が滑った。落ちるー! 「わー!」 ドスン! 「いってー」 「・・・」 ごめんなさーい。 男性二人、一人の上に落ちた、下敷きになった男をまたごうとした。 死んでないよね? ピクリとも動かない。 もう一人は頭に手をやっているが動けないようだ。 早くいこうとして、もう一人の男は何かが当たったくらいだから追いかけてくると思い、走ろうと思った。 いってーなという男に足をぎゅっとつかまれた。 その手を踏もうとした。 「亜矢さん?」 ・・・誰? 「逃げたぞー」 「女を見つけろ!」 「ねえ、見つかんない?」 〈見つかりませんよ〉その男と車の後部座席にいた。彼は社員食堂へよくご飯を食べに来ていた人だ。 「ねえ、ここで何してるの?」 〈潜入捜査〉 かれは、戸田先生の所にいる人だ、たまたま居合わせたらしい。蝶ネクタイをしてスーツ姿、これも、萌です。ダメだ今妄想してる場合じゃない。 「だって弁護士でしょ?」 「弁護士でも、やることはありますからね、それに俺は弁護士じゃないし」 「先生には連絡しておいたから、いいね、ここでじっとしてて、寒いから毛布かけておくからね。俺、仕事にもどんなきゃ、何言われるかわかんないから」 座席の下に丸くなった。 「あのー、これ、思わずもってきちゃって」 「何?」 「おかね」 その封筒を渡した。フューと彼は口笛を吹いた。 「これは持っていて、先生が来たら渡して、いいね」 「はい」 彼は、車から降りて行った。 外はまだ探しているのか、男たちの声がいつまでもしていた。
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