第二話

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どうして彼がここにいるのか尋ねた。 「受験だもん」 「大学受験だ、なー」 「え?なんで?留学したんじゃないの?」 「残念、俺たちもそう思ってた」 「数学チャンピオン大会でね、遊びも兼ねて行ってたんだ」 「そうなんだ、それじゃあ日本の大学だね」 「東大だもんねー」 「すごい、応援するね」 「うん、ということで、兄さん、またよろしく」 「兄貴のところいけよ」 「嫌だよー飯まずいもん」 「お前なー」 「早く嫁さんもらわないとな」 「亜矢ちゃんみたいな子はそうそういませんよ、そういえば、あの約束、切れてるのかな、そうしたら俺、立候補する」 「はい、はい、俺も、年上でも構わないもん」 ぎゅっと、彼が私の首に腕を巻き付け引っ張った。 「く、苦しい、入った、入ったって!」 彼の腕をたたいた。 「こいつは俺のもん、ぜってーやらねえ!手出してみろ、その時は、覚えてろよー」 「やっちゃん、入ってる、離せー、苦しいー」 ごめん、ごめんと腕を離した。 おじい様が何か執事の方に耳打ち。 素敵だなー、あとで、写真撮りたーい。 ぬっと顔が出てきた。 「何よ!」 「絶対ダメ!」 「なんで、どうしてよー」 「顔がばれると困る」 「それってもしかして」 「そう、裏の顔はシークレットだ、黒執事だからな」 「何言ってんだよ、もう表舞台から引退しているからね、あまり表立っては」 なに、何、表舞台、なんの話? おでこをパシン、モー、叩くなー。 「それじゃ記念に集合写真撮りましょうよね、それならいいでしょ」 「俺らはいいけどな」 「別にいいんじゃないのか?」 「決まり!」 執事の方が戻ってこられてから、お手伝いの方に撮ってもらった。 「ムフフ」 「家帰って、引き伸ばして、ココだけ別にしてって考えてるだろ!」 「当たった」 「バーカ」 「ふん」 「ハハハ、亜矢さん」 「はい」 忠典さんが、放棄した遺産、そのため、彼には好きなようにさせてきたのだという。 この先、この間のようなことには決して巻き込まないとおっしゃっていただいた。 そして、叔父様が亡くなったら、三男である典君が家督を継ぐこととなるそうだ。 大変だな、でも彼なら大丈夫かな。 「それで、これを君に、結婚祝いになるだろうか」 彼が立ち上がり、椅子を引いてくれた。 「そばに行って」 そういわれ、そばに行って差し出されたものは、ネックレスというより、首飾り。 頭を下げた。 すっと腕が回ってきた。 「ありがたく頂戴いたします」 すごーい、お姫様みたい。 「まだ写メとるなよ」 「そんなことしません」 あハハハ みんなの笑い顔がそこにはあった。よかった、笑える家族がいて・・・ 家族。 ・・・いいよね・・・まだ、家族。で・・・。
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