第三話

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第三話

お正月が終わると、あのアパートを彼が強制的に引き払った。 いいのかなー、また借りるとなったらどうするのかな? 「あー?」 「なんでもない」 「さっさと片づけろよ」 「う、うん」 少ない荷物は、彼の部屋の隅で私のものを主張した。 そして、おばあちゃんが寝たきりになってしまった。 おじいちゃんがテーブルの上の箱を持ち上げた。 来るたびに、スマホでその箱を取っていた。 「あれ?柄がずれてる」 「どれ、あ、本当だ、じゃあ、これを動かすのか?」 「ん?動かしたら元に戻っちゃわない?こっちが自然よね」 「それじゃあ、これはこっちだな」 「どうすればいいんだ?」 「これを右、これを上にあげて」 「この上に上がったものを一気に全部下ろしたら」 カチッ。 「開いた!」 「開いた?」 スーッと大きな板が開いた。 なにこれ、貝殻? 「ははは、こんなのを取っておいたのか」 「何?」 「これは、お前と海に行った時の拾ってきたもの、でも大事な物はこっちの方だけどな」 紙切れ、だいぶ小さい文字で、虫メガネでもないと読めそうもない。 それが箱に張り付けてあったのだろうか?動かした箱の裏にはノリのような物がついている。 「なにこれ?数字が書いてある」 「井上さん時計は」 「はい、持ってきました」 そう隣のおじさんからもらったもの、わかった、あの男が探していたのはこれだ。 「亜矢、数字を読んでくれ、井上さん、兵頭を動かしてくれんか、時間に合わせてくれ」 読むね、三、十、五、二、七、一、十一、九、四、八、六、十二 「あ、動いた、ン?なんだ?亜矢、虫眼鏡!」 「はい」 「おじいさん、見えますか?」 「なんか出て来たな」 私ものぞいたけどよくわかんない、でも曜日が出るところの枠の中に何か文字が出てきたの、それはわかった。 「あ、止まった、時計屋で開けてもらいますか?」 「いや、井上さん、これは奴を追い詰めるものだろう、このまま警察にもっていってくれないか」 「はい、そうします」 「亜矢」 「ん?」 「井上さんのゆうこと聞いて、何かあったときは、周りの人に聞くんだぞ、もう一人で悩むな」 「うん、わかってるよ、おじいちゃん、ありがとう」 あの捕まった店で行われていたのは、覚せい剤のパーティー、そしてあのお金には、薬がついていたんだって、もうぞーっとしちゃった。 そして、あの時計は、覚せい剤の隠し場所だったんだって、もうそれも怖いよー。 典君を使って、忠則さんを陥れようとした叔父さんは、その男を使って、私を無き者にすれば、彼は、調べることなく、その、覚せい剤を、手にして、大儲けするはずだったらしい。でも、息子、そう私に嫌味を言った奴、あいつも絡んでいて。なんかもうぐちゃぐちゃ。忠典さんの父親の本当のお父さんがそれを解決するために手を貸してくれたというわけ。 んーでもなんか腑に落ちない、みんなで私の事、だましてしてない? 「ごめん」 「すまない」 「先生、どういうことか、ちゃんと説明してください」 「お前にいろいろ言われると困るからだよ」 「私案外口硬いよ?」 「わかってます、それでもどこでどうなるかわからなかったので、何重にも安全策を取っていたんです」 「だからお前は捕まったとき、俺の事を一言も言わなかっただろ、本当に感謝してます」 「ブー、なんか嫌だなー、ねえ、忠典さんの家系どうなってるの?」 俺たちは三人兄弟だ、それは確かだ。
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