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いつか、ねじ伏せてやろうと、集めていた。それが動き出した。
「亜矢、君が現れてからね」
「緒方君、彼ね、操られていたんだ」
運転手兼秘書の緒方さん彼は、井上の遠い親戚になるんだそうだ、北条にいいように使われていたらしい。
「だから、ずっとあいつについていたけど、本業の方が忙しくなって行ってなどうしても手が足りなくなっていたのは確かなんだ」
偶然に、君がバイトで来た。それを緒方が付き合っていた彼女に話たことでそこから、たまたま動き出したことなんだ。 アイツのつきあっていた女は、三国組と言うやくざの女だった。そのやくざの舎弟が、捕まった佐藤、あいつが狙っていたのが亜矢だということがわかった。その時は、亜矢の母親を殺した男と言うのは知らなかった。
「でも緒方さんは」
「まあいつにしてみれば、何も知らないままにただ使われていて、勝手に向こうが自滅した。女に振られ、北条はいつの間にか捕まっていたというとこでしかない」
「じゃあ首とか」
「それはないがあいつ次第だな」
「私が辞めていたら?」
たぶん今頃は殺されていたかもな。
「ただ、高校の先生が来ただろう、ちょうどいい、就職させて君を使おうということになったもんだから、君はこっちの手の内にあったんだけれどもな」
「すまない、こっちに引き込んでしまって」
「それじゃあ私」
「うん、偶然が重なってできた奇跡だよね」
彼に来たお見合いの話は、何とか、井上の会社から離す手段だったらしい。でも私を連れて行って驚いたのは、たぶんあそこにいた全員。
お見合いを蹴り飛ばしていたところに十も年の離れた子、そして、有名な学者の孫娘。
手のことなんかじゃない。
忠典さんが結婚を決めたということにみんなが驚いていたのだという。
本来、彼は一生独身でもいいと言い続けていたのだそうだ。そしてやくざとのかかわりを知っていた数人があの席上にいたということ。
まあその時は知らなくても調べたら、おじいさんのほうは有名人で、いろいろあったから、そこで、亜矢の腕を切り落とした男が、すぐそばにいて、そこから話が漏れ出したということ。
「噓!」
「まじなんだよなー」
「だから、ウソをついてでも、こいつと一緒になってもらうしかなかったんです、亜矢さんを守るためにもね」
「あのね、まさかとは思うけど、おじいちゃん」
「話してあります」
「スゲーだろ?ちゃんと絡んでる」
「えー、でもさ、私結婚しなくてもよかったんじゃない?」
まあそうだけどなー、と頭をかいている人。
「まあ、棚ぼたってとこか?」
みんなが社長を見た。
「俺がか?」
「お前がだろうが、誰が好き好んで、こんな親父のところに、若い子がクンだよー」
「ガクン、お前にまでおやじ扱いかよ」
私は大きく息を吸い込み吐き出した。
「わかりました、では、改めて聞きます、忠典さんは、私とこの先どうなろうとお思いですか?離婚、なさいますか?」
「それは、考えてねー」
「いいのね!」
「おう、お前は俺のもんだ」
「ハ~、良かった、離婚って言われたらどうしようかと思ってた」
「何かあったんですか?」
「うん、赤ちゃんで来たから」
「はーあー?」
「噓、いつですか?」
「病院行った日、足捻挫しているのよりも、こっち気にしなさいって」
「お前なー!」
「まあ、何というか、おめでとう」
「おう、って、いつ生まれんだよ!」
「えっと、ちょっと待ってて」
母子手帳。
「お前、それ」
「ン?もらった、えっとね、予定は九月五日ぐらいだって」
「噓ー?おい、それ、おじいさんには?」
「まだ言ってない、だって離婚したら無理だもん」
「軽いなー」
「ガキだしなー」
「ガキいうな、じゃあ届けだしていい?」
「まだ出してねーのか」
「別にー、生まれたときの方が忙しいみたいだけどね」
「もう、いいのかこれで」
「いいんじゃねーか、頑張れよ」
「パパ、よろしくね!」
やっていけるかなー、だってさ。
私、ベイビーが出来ました、みんな喜んでくれたよ。
子供ができて、寒い寒い二月。
おばあちゃんが亡くなって、そのあとをおうようにおじいちゃんも亡くなった。
二人はひ孫の誕生に喜んだ。
おばあちゃんも分からないなりにもやはり赤ちゃんの力はあるようで、笑って撫でていた。おじいちゃんはしっかりと抱き、もうつらい思いはしなくていいと私に言ってくれた。それが最後だった。
おじいちゃんおばあちゃんの遺骨をもってお母さんのお墓にいれた。
やっと三人。
親戚たちからももう冷たい目で見られないね。
「お母さんありがとう」
「見てますか?あなたの孫ですよ」
彼は涙を流す私の頭を抱いていてくれた。
彼がずっとそばにいてくれた。
彼がずっと横にいてくれたんだ。
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