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「それじゃあお願いします、お疲れ様でした」
「お疲れ様です」
急げ―、時間だーぞー!ただいま今自転車をこいでおります。
自転車?のれるの?
乗れたんです、ママチャリ、買ってもらいました。なんか夢のようでうれしかったです。
えッちゃんたちにも見てもらいました。
二人は私に抱き着いて喜んでくれました。
「遅くなりました」
「花ちゃんママ、義理セーフっす」
「やり―、ねえ見た、昨日の」
「見たッす、いいっすね。キャラ、ちょーかわいいっす」
「んん―、小林君、何を見たのかなー?」
「橋本先生、いつもありがとうございます」
「井上さん、あんまりこんなこと言いたくないですけど、深夜番組、みんなが見る訳じゃありませんから、あんまり進めないでいただけますか?」
「すみません」
「小林君も、いい、遅刻したら、減給ですからね」
「はい!」
ごめんねと言いながら、平謝り。
「花ちゃんお待ちかねですよ」
「はい、ありがとうございます」
部屋に入ると、こっちを見た。
「かあちゃ!」
「花―いい子だったね、帰ろうか」
この保育園は時間で見てくれる、朝九時に預けお昼の一番忙しい時間を終え、三時には、迎えに来る。少し大きくなったら、八時半の四時までになる、会社みたい。
半年はお休みさせていただきました。花ちゃんを背負って、仕事をしたのよ、えらいでしょ。
どうしても無理な時は、社長室で、預かってもらう時もある。
今彼の部屋の隅には、彼女のベッドが置いてある。
そして、今一番大きな変化は、そう、彼が早く帰って来ること。
典道くんは大学三回生、あー三年生だ、どうもじいちゃんが関西の大学だったからかこういうのよね。
ちょいと雑学、京都大学が東京の大学に差をつけるためにこういったらしい。もし二年生を落第したらもう一度一年生だよね、東京はそういう。だけど、関西は、二回生というんだって、落第しても二年生という事だ。
典君はここから通うも、バイトとして、相変わらず彼の下で働いている。
「ただいま」
「ただいまーいい匂い」
「お邪魔します!」
彼は新しい秘書とともに遅くても八時には帰ってきて、一緒に食事をとるようになった。
仕事は、任せられる人材が育ってきたこと、もうがむしゃらに突っ走る必要はなくなったからだ。
緒方さん?彼はやめてないよ、彼は秘書課のトップにいて、会社を切り盛りする方に回ったのだ。
私も今は、八時で上がらせてもらっている。最後の戸締りは任せている。
「では明日の予定をかきましたので、帰らせていただきます」
「おつかれさん」
「おやすみなさい」
帰りはあの日からずっと送ってもらっている。自転車は会社でだけ使っているのだ。
お風呂に入り、仕事があると、部屋に入った彼を見送り、私は
「今日は、これ、花ちゃん一緒に見ようね、かわいいよ、ドレミちゃんだって」
小学校の時、見ることのできなかったテレビ番組を今こうして娘とみている。
うれしいな。
「バーバー」
「ほら、魔法だよ」
「キャー」
「わかってるねー」
うるさいかな、少し、音、絞る!
楽しい音楽が鳴り始めた。
「おっ!忠典さん!おとうちゃん―来て、来て!スマホ、スマホ、花ちゃ~んこっち見てー」
音楽に合わせて、つかまり立ちしていたのが手を放しました。
「なんだ?オー、俺もスマホ!」
「何?騒がしいなー、オー、ぐっとタイミング、花ちゃんそのまま~」
みんなで撮影会、花ちゃんがたっちしました、足をぎゅんぎゅんしゃがんだり立ったり踊っているみたいです。
「お、ダメか?座るか?」
「アー、座っちゃったー」
「すごいなータッチしたのか―」
「とうちゃ、キャッキャ!」
〈アフー〉
「眠いんじゃないのか?もうこんな時間、早く寝かせろよ」
「わっ、なんか興奮しちゃって」
「すげ、アイドル半端ないです」
「何、何?」
と典君のスマホを覗こうとした。
「あ~や―、早く寝かせろ!」
「はーい!」と口をとがらせ、花ちゃんを抱っこ。行くと見せかけて。「なに?」ともう一度覗いたら睨まれた。行きゃいいんでしょ行きゃあ。後ろで「みて」という典君の声。
「かわいいもんなー」
「親ばかだよ」
「いいんじゃー、嫁になんか出さねえからなー」
「はい、はい、俺勉強、おやすみ」
「おう」
その会話に笑いが出てしまった。ポンポン、ねんねしましょうねー。
寝そうか?
もうちょっと。
ベッドで彼はスマホを見ていた。
「なに見てるの、わー凄い、もえーだ」
びっしり撮った我が子の写真。
「いいね、アイドル」
顔がほころびっぱなし。
彼だけじゃない、おじい様もそうだ、女の子がいない家系に咲いた花は、みんなから可愛がられた。
「なあ」
「なに?」
「後二人ぐらい平気?」
「そりゃほしいよ、兄弟は多い方がいいもの」
「よし、それじゃあ合意と言うことで、チュウして」
「いいよー、はい、チュー、ねえ、名前呼んで?」
「亜矢ちゃん」
「ダメ―、まじめに、いい声でお願いします」
「よし、いい声―」
「真面目に―」
「もう、わがままだな」
頭を抱き寄せて、耳元でいう、彼の息、体温、そして……。
「亜矢」
ぞぞぞー
そのままお返し、超色っぽい声で
「忠典さん」
「萌―」
「きゃー」
ただいま絶頂幸せ~萌え萌え、チュウでーっす!
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