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Epilogue
勘違いの恋から始まった。彼との出会いは。
はずれ、じゃなかった。
私の手の事を、今まで一度もない事で“大変だろう”と言ったことがない。子供が生まれてもそうだ、助けてくれはするが、手を気にしたことはない。
普通、これが出来る人ってすごいんだなって改めて思った。
ハンデを生まれながら持った人はそれなりにいる。ただそれが目に見えるかそうではないかもあるだろうが、この世界、ハンディーキャップを持った人には優しくない。
大リーガーで活躍した選手がいる。
オリンピックで大偉業を達成したテニスプレイヤーがいる。
でも私のように、親のせいにはしたくないけれど、両親がいたのなら世界は変わっていたと思う。
私は親友という人に恵まれた、それはこの先も変わらないと思う。そして職場でも。私の周りには、そんなエリートがいる。
北条のあの時一番前にいた人たちの多くは捕まって、あのあと大変なことになった。それとあの男、あいつはもう刑務所から出てくることはないんだって。もういい、聞きたくなかったから。
ただ、戸田先生にちゃんと話を聞いてほしいって言われたの、父と母の事を。
泣きながら聞いた。
私はちゃんと愛されて生まれたんだという事。
それと百科事典に挟まっていた手紙を受け取った。
見つけたのは忠典さん、おじいちゃんは死んだあと見せてほしいと戸田先生に話してくれたんだって。
そして、私の手元には、おじいちゃんの特許が売れたお金と、本の著作、そして、世界に認められた研究の証明書。
「みんなおじいちゃんのだ」
ポロポロと出るのは涙ばかりだった。
なんでかな、みんないなくなったのに……。
帰って来て、おばあちゃんのあの箱の後ろに証明書を飾った。母さんの茶碗の中には、アクセサリーが入っている。その周りにはいっぱいの笑い顔の写真を置いてある。
もう哀しい過去はいらない。
だからここにあるのは笑顔だけでいいのだ。
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