Epilogue

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あの時計とカフスボタンは、麻薬の隠し場所、そしておばあちゃんが持っていた箱の中にあったメモはお母さんが書いたものをおばあちゃんが隠したものだった。 警察は返してくれると言ったけど、時計は母のお墓に入れた。カフスは現金だなといわれたけど、彼にお似合いだから上げた。本物のダイヤモンドで一個数千万もするんだって、…やくざ顔、若頭は返上かな?頭!絶対言えないけどね、言っちゃだめだからね。 新聞には最高額の麻薬が出てきたなんて新聞やテレビがさんざん騒いだけど、関係ないし。 ああ、そうそうあのお金、落とし物になっていてね、一年後、戸田先生のところの彼、私を助けてくれた人ね。彼がご飯を食べに来てくれた時お金の話をしたの。 「それ本当?」 冗談だと思った。 でも彼に、冗談だったらそれでいいだろ、でもくれるっていうならもらっておけばいいじゃんかというのだ。 あの拉致された時、思わず手にしたおかねは、拾ったことにしてある、それが持ち主が現れないから私のものになるなんて言うんだ。 忠典さんも冗談だろうというもんだから、彼が、もしものときははんぶんくれよな、なんて。じゃあ警察に行こうとあんまりにしつこいものだから連れて行ってもらったんだ。 そしたら、ぬわんと! 「ご、五百万、マジで?」 なーという彼。 手を出してきた。 「ん?」 「報酬」 報酬ねえ? すると彼は、その袋を取り上げると一束取り上げた。 「もらった、へへへじゃな、またご飯食べに行くから」 えー?いいの? なんかにまーっと顔がほころび、そのまま二階へ上がっていった。 「なに、にやにやしてんだよ」 とっさにその袋を隠した。 何隠したという私の背中からそれを取り上げた。 「現金?まさか」 そのまさか、百万円は彼にとられたことを話した。 「よし、拾い物だ、貯金、貯金」 えー、少しは私に。 彼は振り返ってこういった。 「少しは私になんて甘いからな、夫婦のもんは俺のもんでもあるからな」 「えー?!」 「ハハハ、ついてる、ついてる」 ガックシ、まあいいか?金は天下の周りもんだ! でも、今思うとぞっとする、あの時、黙ってあそこにいたら、あの時、窓から逃げ出していなかったら、あの封筒を持っていかなかったら。 たぶん私はこの世にはいなかっただろう。 でもこの人は、悲しんでくれたに違いない。 だって、私、愛されているもの。ね? となりに眠る人の大きな背中に言ってみた。 「愛しています」 寝返りを打って覆いかぶさってきた。 「俺もだよ」 「ちょー、萌でーすー」 「うるさい寝ろ!」とおでこをぺシン! 「ねえ、もう一回言って」 「いやだ」と言って向こうを向いてしまいました。 「ねえ―お願い」 早く寝ろ! ハーイ……もう一回だけ! しつこい! おやすみなさーい。 「おう」 この声は私にとって永久不滅、二人ともに永遠に――。 END
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