目覚めたあとに……

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 幼い頃の私は、『彼』に会えるのが楽しみで仕方がなかった。毎日、天気予報をチェックしては、雨の日を願った。雨の日は、一秒でも長く『彼』と過ごしたくて、早く眠りについた。それくらい、『彼』との時間は、私の生活の一部であった。  でも、『彼』のことは、姿かたちは、鮮明に思い出せるのに、『彼』と過ごした時間に、私たちが何をして、何を話したのかは、全く思い出せない。ただただ、楽しかったという綿菓子のようなふわふわした甘いあまい、掴みのどころのない余韻が残っているだけ……。  最近の私は、『彼』に会うのが楽しみというよりは、目覚めた時には倦怠感を感じるようになり、少し辛くなってきている。年々、頭痛まで伴うようになってきているからなおさらである。    大好きな『彼』なのに、現実には存在しない、会うことのできない切なさともどかしさもあるのかもしれない。  もちろん、『彼』と会っている時は、楽しい時間なのだが、幼い頃のような、また会えた!嬉しい!というルンルンルンと浮き足だった感情だけがある昔とは、今は違う。    とにかく、目覚めた時のグッタリとして、動けなくなるほどの倦怠感がかなり強いのだ。  何か大事なことを忘れていて、それを思い出したいのに思い出せない。他のことが何も考えることができなくなるくらい頭の奥から、ガンガンと突き上げられるような痛みの頭痛にも悩まされている。  頭が痛すぎて、身体が鉛のように重くてうまく動かせず、ただひたすらにベッドの上に横になる。  まるで自分だけ、漆黒の大きな重い布を無理やり被せられて、その暗闇の中で、呼吸するのも絶え絶えに、一人でもがいている、そんな感覚なのだ。  
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