目覚めたあとに……

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 今日も目覚めた私は、孤独な暗黒の世界の中で、頭痛と闘いながら、必死に、夢の中での『彼』との時間を思い出そうと、静かに目を閉じてみる。  思い出せるのは、『彼』が、私に向ける笑顔だけ。そして、あたたかな余韻……。  思い出せそうなのに、思い出せない。思い出そうとすればするほど、頭痛は増すばかり。    そういえば、今日は、目覚める前に、『彼』のあの包み込むような低音ボイスで、私の名前を呼ばれたような気がする。  「光希(みつき)……」  いや、私の勘違いもしくは願望なのかもしれない……。  私は、『彼』の隣で、私の名を呼ぶそのあちかな笑顔をいつまでも見ていたい。そう思うのは、贅沢なことなんだろうか。間違っているのだろうか。  幼馴染であり、初恋の人であり、私の理想の人でもある『彼』に触れることもできなければ、抱きしめることも、手を繋ぐことも、キスすることもできない。  ーー神様はなんて残酷なことをするんだろう。  ーー貴方に、会いたい……  ーー貴方に、触れたい……  ーー貴方に……  ーー貴方に……  ーー貴方に……  そんなこと悶々と考えていると少しずつではあるが、頭痛も治ってきた。そして、私は、ゆっくりと身体を起こして、時計を見ると、時計の針は、7時を指していた。    
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