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憧れだったんだよね、こういうの。キャッツアイとかさルパン三世とか。 ふーじ子ちゃんはいなくても、大親友の次元やここぞという時に助けてくれる五右衛門がいる訳でさ。
窓の上に滑車付きのフックを引っ掛けた。
下をのぞくと目があった。黒いマスクと黒い布で頭を覆っているから目だけしか見えないが、仲間だ。
すると上から落ちてきた黒い大きな影。
「ルーちゃんよろしく」
「リュ」
お宝を入れた袋を差し出し、下をのぞいた。
丸の合図。
私にもそんな友ができたというわけで。今日は月明かりがあるから、黒いのはマントではなくトレンチコートだけで白い綿のワイシャツのほうがあたりになじむ。口には黒い三角巾。頭には少し長めの黒い布を鉢巻きの様に巻いている。
蜘蛛が白い糸を残しながら下へと降りていく。下ではそれを結んで輪にした。手が上がった。
クッと引っ張ると廻り始める。
糸にSカンをはさみ、袋を引っ掛けながら次々おろしていく。
一つしかなかった影が別れ、闇に消えていく。
カ・ラ、カラ、音を極限に抑えるようにしてそれでもすばやく、お宝を引っ掛けおろしていく。
そしてそろそろ終わろうかという頃。
「へー」
ドキン!と心臓が音をたてた。
やばい!見つかった!
声のした方、大きく開いた窓の方を見ると窓に座ってその様子を見ている金髪の少年。いや青年かな?
「そうやって下ろすのか、頭いいな、仮面の君、いや今巷で有名な泥棒かな?」
首にかけていたものを口にくわえた。
ピッ!
音に上を見上げた人。体を乗り出し滑車を切り落とすと下で大きなもの音をたてた。私はその反動でシュルシュルと屋根の上へ登った。
「わー」という青年の声、でも彼は大声すら上げず私だけを見ているようだ。
「旦那様、お声がしたのですが?」
「……え?いや、なんでもない」
その次の瞬間。
パッパッと家の中に明かりがつき、声がさざ波のように増えていく。
曲者‼曲者だ!
大きな声があちこちから聞こえてきてはいるが、美しい青年は下から私を見上げ微笑んでいる。
私は青年に頭を下げた。
そのとき頭に撒いていた布が取れた。
やばい!
手を伸ばしたが、はらりと落ちた布は、月明かりでその全貌を映した。
「黒髪!おぬし?・・・女か?」
「誰かおるのですか!」
へ?あれ?
さらりとした黒い髪がまとめていたはずなのに流れた。もう、なんでよ!もう、仕方がない、そのまま、脚を屋根に差し込むようにてっぺんに向かい登って行く影が映る。
「お、おい!」
「王子!賊は!」
ガシャガシャと言う音が隣下から聞こえる。
私は屋根の頂上へのぼりつめた、下からは青年の部屋から外へ出ようとする人たちがどけと言いながら団子になって叫んでいるのがわかる。
「泥棒!」
「泥棒だ!」
届かない明かりを向けているのが見える。そろそろいいかな?足に付いていた金属を取り、走りやすい状態に。すべてを切り落とし、回収。背中のリュックに入れた、エーイ、かつらも入れちゃえ。
合図!
きらきら光った。
屋根の上を駆け足で左から右へと走り出した。
下り坂はスピードを上げる。
映画のワンシーンの様、楽しい!
バサッ!
大きな音をたて広がった物が風を受け、ぐっと空に浮かび上がった!
「曲者は上だ!」
「何をしてる、早く行け!」
「飛んだ!」
「なんだあれわ!うぁ!」
「黒髪の魔女だ!」と誰かが叫んだ!
「弓を引け!撃ち落とせ!」
我先にと窓から顔を出す人たちですが、もう遅い。
月明かりが味方してくれた。泥棒なら暗闇と思うかもしれないけど、この世界明かりは貴重で、金持ちじゃないとこれだけの明かりは出せない。もう屋敷の明かりだけで回りまで明るくなっている。
「さすがルーちゃん特製ハンググライダー、最高!」
後ろの屋敷は大騒ぎ。
でも私は逃げるだけ。夜の闇にまぎれ、飛ぶ。
ヒャッホー!泥棒最高!
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