第18話「正答率120%の『賢者』」

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第18話「正答率120%の『賢者』」

0ebdf9c8-96a8-422e-94fd-bfc02f7a6ea0(UnsplashのMichelle Dingが撮影)   金曜日に来た『リリー』に、月曜日の夕方また来る、というのは妙な気持だ。そしてあたしとスミレは、金曜日と同じ席に座る。向かい側にいるのは『総務の賢者』、高瀬さん。今日は高瀬さんだけだ。  そして『賢者』の大事な道具、巨大な電卓が置いてある。 「土曜日のこと、ありがとうございました」  ぺこり、とスミレが頭を下げる。高瀬さんはうなずいて、 「あのあと、山中さんからもメールをいただきました。名古屋観光がとても楽しかったそうですよ」 「こっちも楽しかったです。なによりもスッキリと一線が引けました。これからしばらくは、自分の事に集中します」 「それがいいと思います。さて、あなたの事ですが」  高瀬さんは几帳面にあたしの方を向いた。電卓もエントリーシートも、あたしの方へ向ける。  ちゃっ、と電卓の上で手をかまえた。 「事前のエントリーシートから、ざっくりと計算しました。 『デートは週に2回、1回は平日で1回は週末』……プラス120点。 『家事は分担制』……プラス70点、 『ケンカの回数は月に1回以下』……プラス「380点、 『定職がある』……プラス890点、 『暴力を振るわれたことはない』……プラス960点」  ぱちり、と高瀬さんは電卓をたたき終えた。 「今回のエントリーシートには経済的な面があまり含まれていませんでしたが、青井さんは当社に勤続6年。勤務状況にもめだった問題が見当たりませんでしたので、考慮しませんでした。  我が三ツ星機械は、業界でも有数の安定企業です。給与体系も決まっていますし労組もあります。現状ではマイナス要素を算出する必要はないと思います。  つまり計算の結果、『ダメンズ係数』はマイナス2420点。つまりダメンズではない、という事です」
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