第25話「あたしの人生、おわったわ」

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第25話「あたしの人生、おわったわ」

e47ea096-8f29-4431-8f41-c92bbc11b9cb(Jörg PrieserによるPixabayからの画像 )  スミレの叔父さんは、ほんとうに5分後に来た。40歳くらいの男性ドクターは、あたしの状態を見るなり、 「相手の男、訴える?」  と聞いた。 「簡単な事情はスミレから聞いたけど、これ、DVの暴行・傷害事件として訴えることができるレベルだよ」 「でも、あたし結婚していませんけど」 「同棲していればじゅうぶんDVとして成立するよ。医師の診断書やカルテへの記載があれば、裁判や保護命令を申し立ても可能だ。  裁判所を通じて『接近禁止命令』を出してもらうこともね」 「そうなんですか……」  あたしは考え込んだ。  でも今はなんにも思いつかない。  スミレのおじさんは、 「まあ、今夜スグに、っていうわけじゃない。でも状況証拠は残すべきだな。  スミレに頼んで全身の写真を撮っておくようにね。  診断書は明日、書きましょう」 「……ありがとうございます」 「泣き寝入りっていうのが一番よくないんだ、体にもメンタルにも。  いろいろな選択肢もあるって覚えておいて」  そう言って、帰っていった。  その晩はスミレが泊めてくれた。というか、 「あんたね、しばらく家に帰らないほうがいいわよ。青井さん、あそこに引っ越してきたでしょう?」 「……うん」 「着替えとか取りに戻りたいだろうけど、生きていることが先決だから。あの部屋に残してきた大事な物ってなにがある?」 「……おいてきたのは、通帳くらいかな。財布とスマホは持ってきた」 「わかった。今日は眠って、むつみ」  眠れなかった。  人生で最大のショックが襲ってきたんだから。  信じていた彼に、これからの人生を一緒に歩こうって思っていた彼に、罵倒されて髪を切られて、蹴られたんだから。  窓から、白く明けていく空を眺めて思った。  あたしの人生、おわったわ、って。
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