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第31話「つかまえたわ、クズ男」
(UnsplashのErwiが撮影)
部屋のすみにあるペットカメラに映像が出た。
北京に出張中のスミレがいる。
「あー、今度は絵が出たわー! むつみ、どう? 高瀬さんと会えた?」
「うん、高瀬さん、ここにいるの」
「どうも。お疲れ様です、西崎さん」
「あっ、ほんとだわ。ね、ペットカメラだけど、本当に必要な部分だけはきれいに映るもんでしょ?」
「……どうかな、こっちの画面はスマホサイズだから、よくわかんないよ……」
「そうだっけ? こっちはノートパソコンで見ているから、見たいところは明瞭よー」
そのとき、がたっ! と高瀬さんが立ち上がった。
大きな目を見開いて、口をあいている。
「……ほんとうに必要な部分だけは、きれいに映る……」
「あの、高瀬さん?」
今気が付いたけど、高瀬さんって美人だな。
目がくっきりしていてアヒル口。二十歳そこそこのときは、もっときれいだったんだろう。そりゃ不倫男が狙うはずよね……。
そんなことを考えていたら、いきなり高瀬さんに胸元をつかまれた。
「写メ……! スマホにあった写メを見せてください!」
「へ……? あ、あれですか? ピンボケのあたしが写っているやつ」
「そうです、それです!」
高瀬さんはあたしからスマホをむしり取ると、すごい速さで画面をスクロールしはじめた。そしてめあての写メをみつけると、じっと見つめる。
画面を拡大したり、移動させたりしている。
結局、あたしの顔はどうでもいいわけ? そう突っ込みたくなるくらいに、あたしじゃない所ばかりを見ていた。
そして写メに視線を据えたまま、
「……わかったわ。
バヤ!! パソコン持ってきて、つないで!!」
部屋の外に追いやられていた若林課長が顔をのぞかせて、
「えー、これから期間限定のキットカッターを食べるところなのにい」
ぶつぶつ言いながらコンビニ袋からノートバソコンをだした。
って。
菓子と一緒に突っ込んでいたんかいっ!
起動したパソコンの上を、高瀬さんの超高速タイプがヒップホップダンスみたいに駆けめぐった。
カタカタカタタタ……っ。
カカカカカっ、たんっ。
やがて、音がとまる。
くっきりと目を開いた高瀬さんが頬をピンク色に染めて、ニヤリと笑った。
「……つかまえたわ、クズ男……これが理由だったのね……」
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