完結済 女子のための中編小説💛「うちの総務には『賢者』がいる」

第32話「最後には、真実が勝つ」

（UnsplashのSASIが撮影）

　翌日、あたしと高瀬さんは一緒に出勤した。高瀬さんはそのまま、スミレの部屋に泊ったのだ。さすがに若林課長は帰ったけど。
　高瀬さんはひと晩かけて、あたしにじっくりと作戦を説明した。

「いいですか、ポイントは、あなたが冷静さを保てるかどうか、です。
　すべての証拠はそろいましたし、あのクズにはもう、逃げ道はありません。

　でもあなたが途中で感情的になって暴走したら、こちらの有利さは失われます。

　冷静に、正確に、弱点を衝く。それだけでいいんです。
　弱みがあるのは、嘘をついているほうです。
　真実は強い。
　すべてをありのままに見ているほうが、最後には勝つんです」

　あたしは黙ってうなずいた。
　そうだ、感情的になっちゃダメだ。
　今のあたしは、事実を事実のまま見ている。
　痛い現実をありのままで見られるように、『賢者』が助けてくれたのだ。

　この支援を無にしてはならない、断じて。
　腹をくくって、出勤した。