第36話「ストライク、ワン」

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第36話「ストライク、ワン」

03d63048-3774-4483-967d-71b3cfc36163 (UnsplashのJessica Felicioが撮影)  営業二課の面々の目に、キャッシング関連のチラシ写メがあらわれる。  今どき珍しい電話ボックスに貼りついたチラシ、トタン塀にしがみつき風に揺れているチラシ。  チラシ、チラシ……。 『電話一本でチャンスを。30日間 無利子』 『審査3分、10万円までかりられます』 『スピード融資20万円』 「なぜ、こんなにお金が必要なんですか?」 「偶然、撮ったんでしょ? 僕、借金はありませんよ。  三ツ星機械は給料がいいですからね。  だから僕は、いつだって明朗会計、現金払いですよ」 「クレジットカードを使わないんですか?」 「僕、そういうの嫌いなんです」  そういって、ヤツはとなりにいた若い女子社員にニコッとして見せた。  あの顔。  あたしはもうだまされないけど、次の獲物が決まっているのなら救ってあげなくちゃ。それが女の連携プレーってもんだ。  タイミングを見計らって、大声で言う。 「クレジットカード、嫌いじゃなくて、『作れない』のではありませんか?」  ぴく、とヤツのこめかみに血管が浮いた。  ストライク、ワン、だ。 
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