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最初に行った新宿にあるオカマバーは、道雄が想い描いていたものとは違った。
綺麗でいることよりも、奇抜なメイクで面白おかしく、そして強烈なトークで客を喜ばすことが求められた。
お世辞にも綺麗と呼べる人はいなかったし、普段は男が好きな、ただの男だった。
何も知らなかった道雄は女装といっても色々な種類があるということをここときに学んだ。
ちなみにこのときに付けられ源氏名はオイカワツキミッチーという当時、よくテレビに出ていた歌手をもじった酷いものだった。
次に跳び込んだのはもう少し見た目が綺麗な人が揃っている、いわゆるニューハーフの人達のお店。
ここの人たちは普段から女性でありたいという気持ちをもっていた。
どの人も優しく、世話好きでメイクの仕方や下着の選び方、ドレスの着方など沢山のことを教しえてくれた。
でも、やっぱりド派手なショータイムや露出の激しい衣装はとかはちょっと違うという思いがあった。
このときの付けられた源氏名はミッチーQ。
これも全然気に入っていなかった。
なぜQかというと、長距離走をやっていたという、ただそれだけの理由でマラソン界のレジェンドからもじられたものだった。
その後、日本舞踊や華道の教室に通い、本来の求めていた美しさを自分なりに蓄積し、女性として銀座の高級クラブに潜り込んだ。
もちろん、ママには面接でちゃんと全てを話した上で採用されてたけど、客も従業員も知らない人の方が多かったと思う。
このときに、ママに付けてもらった源氏名が「静流」。
やっと真っ当な名前を頂けてほっとした。
そして、その時に得た各界のVIPとのコネクションを利用し、
自分がなりたかった自分、そしてなりたかった自分として働ける会員制の店をこの街に開業することができた。
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