20xx年

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20xx年

「さて、ジパングでは天皇陛下の世界のために、自己犠牲を払いましょうという会見を、国民が固唾を飲んで見守っていました。天皇がそう仰るなら、わたしたちも運命を受け入れましょうという気持ちになったのですね。つまり、自己犠牲の精神が働いたのです。NASAは迎撃に成功。小惑星「ファルコン」は見事に粉砕されました。しかし、ジパングは結局、小惑星の破片の直撃を免れることはできずに消滅しました」  教師は肩で息をついた。 「先生、先生はその道は正しかったと思いますか?」  生徒の一人が質問をする。 「もし、ジパングがイエスと表明しなければ、我々はこの世に存在しなかったことになります。ワタクシは正しい道だったと思います。14番、君はどう思いますか?」 「わかりません。ただ、かつて、ジパングに高名な詩人、高村光太郎という偉人がいたそうです。彼はこんな名言を残しています。僕の前に道はない。僕の後ろに道ができると。ジパングが歩む道は始めからなかった。ジパングが歩んできた後に歴史ができ、その歴史が評価された。だから、僕は正しかったと信じたいです」  教師は拍手をした。それに呼応するかのように、クラスメイトたちが拍手を送った。  極東にあった小国、ジパングは世界を救った国として、その名を歴史に刻み、現在もその偉業が語り継がれている。            <了>
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