2029年

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2029年

 この日、防衛省は慌ただしく、人が出入りしていた。  それもそのはずで、三日後に小惑星「ファルコン」が軌道を変え、地球に衝突するという報が入ってきたからだ。  「ファルコン」は当初、軌道を逸れることなく、地球から数万キロ離れた軌道をゆっくりと移動する予定だった。だが、突如、軌道が変わり、地球に接近してきたのだ。  タイムリミットは3日。NASAは計測上、3日よりも早まる可能性も示唆した。世界の終末時計は滅亡十五秒前を指した。  つまり、地球の寿命が3日であることは明白な事実であった。喉元にナイフを突きつけられていた。  ジパングだけではなく、世界中が混乱した。ついには絶望して大量の自殺者までが出た。こうなってくると、混乱は収拾がつかなかった。警察や消防や鉄道は、一切の活動を停止し、あちこちで犯罪行為が繰り広げられた。世界経済は凋落し、紙幣は紙くずとなった。  まるで、映画を観ているようで、現実感を伴わなかった。  時の内閣総理大臣、榎田豊は、緊急招集会合を開き、与野党に対して今後の対策について、話し合う場を設けた。だが、野党議員から、今更何を話し合うというのかと、総理を叱責する声があがった。  榎田はそれでも、自分は国民から選ばれたジパングの代表であり、ジパングが一隻の船であれば、船頭だと自負していた。だから何が起きようと逃げてはならないし、何もせず、傍観もしていられないのだ。
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