Chapter*25

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他者がなりすまして加入した生命保険に、その直後に発生した加入者死亡の交通事故。ただの偶然と考える方が不自然だった。 警察が疑ったのは、保険金を目的とした事故に偽装した殺人。捜査をするうちに、事故で処理された拓真の母の死にも不審点が見つかったのだという。 生命保険の申し込みから暴かれた悪事は、突発的なものとは言い難く、前々から準備している点から見ても計画的な犯行だった。また拓真の事件で巻き添えを食らった被害者は決して少なくはなく――。 犯行は悪質で卑劣な手口であると検察側は訴えた。 更に拓真の母親に対しても、〈Lee〉が莉子のアカウントであることが警察の調べで明るみになり、嫁いびりが動機だったことは想像に難くない。 検察に指摘されると莉子は、 「私のせいじゃない!コメント欄で殺していいとそそのかされたのよ!」 とヒステリック気味に主張した。弁護側は精神的に不安定だったのだと主張を繰り返し、減刑を望んだが、検察側はそれを否定した。 転落事故を装った殺人未遂行為に、事故を裏付ける証言を繰り返したこと。投与していた点滴を下水へ廃棄したことや、拓真を殺害する手段に直接手を下さない手段を取ったことなど、行動が一貫して罪の隠蔽を計っていることから責任能力も罪の意識もあると結論付けられた。 更に意識不明で身動きの取れない被害者への残忍な犯行、保険金を目的とした夫の計画的殺人。 回を重ねるごとに明るみになる莉子の犯行には、いずれも情状酌量の余地はなく、到底許されない罪であると言い渡された。 それでも莉子は納得せず、傍聴席に座る奈央を見つけるや否や、 「そいつ!そいつのせいよ!」 と喚き散らす。莉子は最後まで反省の色を見せなかった。 その結果、莉子に言い渡された判決は無期懲役だった。莉子は納得がいかない様子だったが、証拠が揃っていながら反省はおろか罪を認めない姿勢が、判決に影響を及ぼしたようだった。
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