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大通りに出た。
細い脇道に入った方が逃げきれる可能性があったはずだが、そんな事を考えている余裕がなかった。
まばらだが、道路を渡った先に、サラリーマンや学生達の人が見える。
安堵した俺がやっと後ろを振り向くと、目と鼻の先に猛獣の顔が迫っていた。
ひぃっ!
「だ、誰か……。虎だ……!」
俺は残りの力を振り絞って走り出した。
だが足がもつれ、絡まる。
ほぼ同時に全身に衝撃が走った。
身体が吹き飛ばされ、地面に衝突するまでの僅か1秒にも満たないはずの映像が、スローモーションで再生される。
全身に走る激痛が静まる気配はなく、生暖かく鉄の匂いを発する液体が、俺の身体の側面をじわじわと包み込んでいく。
俺は虎に追い付かれてしまったのか……。
「おい!生きてるか!?」
バタン!と扉が開く音と、男性の叫ぶような声が聞こえる。
俺の身体は動かない。動かせないのだ。
「見てたよな?こいつが急に飛び出してきたんだ!」
男性が周りに確認しているようだ。
それより虎はどうなった?
みんな、逃げないのか?
「その人、『虎が……』とか叫んでたような……」
「薬でもやってるんじゃないですか?」
「俺は悪くない!こいつが飛び出してくるから!」
「すげーっ!血まみれじゃん!クラスの奴らに画像回してやろうぜ!おい、お前らも早く撮れよ!!」
考察や言い訳や撮影はいいから、誰か早く救急車を呼んでくれ。
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