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13年前、俺は病に伏した。それまでは仕事で行った先々で、捕まえた女の首をベルトで絞め体を弄び狩りを楽しんでいた。命さえ奪わなければ被害届など出されることはなかったし、同じ地域を避ければ噂が流れる事もなかった。それを知っている者がいるとすれば、それは被害者でしかあり得ない。
「だからお前を試したのよ。妹が運転する車を追わせながらね。妹と私は双子なの。お前は私の顔を見ても気付くこともなかった。それどころか、まんまと襲おうとまでした」
――追いかけていたつもりが……追いかけられていただって……
目の下にホクロがあるのが妹なのだろうと俺は理解した。それにしても襲える状況を作っておいて酷い言いがかりだ。狩り場があったら狩りをするだろ。それの何が悪いっていうんだ。言い返したつもりだったが、俺の口からは息しか出なかった。
「私は料理が得意なの。血抜きさえすれば解体なんて朝飯前。だからって食べたりしないわよ気持ち悪い。明朝には精肉工場のゴミになるのよ。お前が消えて、妹が普通に生活できさえすればそれでいい。楽に死ねるだけ感謝しなさい」
――やめ……く……
「ちょっと、聞いてる? もう意識ないの? 死んだ? ああ。反応ないや」
――た……け……
「最後に無くなるのは聴覚だっていうから言っておくわ。待ってなさい。すぐに地獄まで追いかけるから」
――
〈狼と羊〉
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