狼と羊 ☆第198回妄想コンテスト「追いかける」入賞

――気づかれてる
　海浜幕張駅周辺は多少交通量が増える。そして違和感を覚えた。前の青いセダンは、俺との間に車が入ると右折なり左折を繰り返した。それはまるで追跡をしやすいようにしているようだ。それを伝えようとしたとき、彼女が口を開いた。
「そこのコンビニの駐車場に入ってください」
「え？　前の車は？」
「大丈夫です。お願いします」
　言われるがままに俺は駐車場に入った。
「そっちから出てください」
「は、はい」
　正直、個タクの看板を背負っているいじょう通り抜けとかマナー違反で目立ちたくはなかったが、もう乗りかかった船だ成り行きに任せるしかなかった。

　通り沿いのコンビニ駐車場を通り抜けると、彼女の指示で路地を進んだ。すぐに視界が開けると、そこは高層マンションが建つ幕張ベイパークだった。
「そこで止めて下さい」
　言われた通り、マンションと地下駐車場の入り口が見える場所に停車した。しばらくすると向こうから追いかけていた青いセダンがやってきて駐車場へと入っていった。
　どうやらここが浮気現場らしい。ここに来ると確信して先回りしたのだろう。この感じだと、もう調べはついているみたいだ。