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エレベーターを出た先は、低い柵のついた玄関口になっていた。彼女は躊躇なく玄関の鍵を開けると入っていった。
「あ、ちょ」
俺は慌てて付いて入った。
浮気現場に突入するというのに、彼女は臆する事なく入っていった。暗く静まり返った廊下を抜けると広々としたリビングに出た。ベランダの窓一面が空に彩られ、高級リゾートのホテルに来た気分がした。
彼女はリビングの明かりをつけると、どうぞと言ってトイレに案内してくれた。
「あ、すみません」
俺は挙動不審だったかもしれない。家の中の様子を伺ったが人の気配を感じなかった。
――いったいなんなんだ? 浮気現場ではないなら、青いセダンに乗った女を追いかけていた理由はなんだ。ここは関係ないのか?
考えた所で分からないもの分からなかった。とりあえず今の状況だけを考えれば、陸の孤島みたいな部屋に彼女と二人きりだ。もしかして、これは神様からのご褒美なのではないか。そう思うと全身に蘇る興奮があった。俺は腰のベルトを外して後ろ手に隠すとトイレを出た。
「どうも、ありがとうございました」
「どうぞ座っててください。今お茶でもいれますから」
キッチンに立つ彼女の後ろにそっと近づくと、俺は両手で張ったベルトをゆっくりと彼女の頭の高さまで持ち上げた。
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