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ローカル−ワン
オーディション会場として関東テレビ本社ビルのAスタジオに観客が入った。
若い観客でほぼ満席だ。ほんの少しだが年配の客もチラホラ見えた。
前説として、ADが客前に立ち拍手のし方を教えていた。
「こうして細かくパチパチと叩いて下さい」
若いADがデモンストレーションをしてみせた。
やがてスタジオに音楽が鳴り響き、生放送のオーディションが始まった。
司会は現在、人気沸騰中の若手注目株、ラブ・プラネットの二人だ。
「ハイ、今週から始まりました。テレビ関東が社運を賭けて放つ大型特番。ラブ・プラネットの『恋する惑星』ですねェ」
ボケ担当の真田がいつものように笑いながら番組の紹介をした。
「いや、違いますね。今回、ローカルの新人芸人による冠番組争奪オーディション。その名もローカル−ワンの司会を担当します。ラブ・プラネットの岡田と……」
「ハイ、真田です。真田と岡田と言っても新日のプロレスラーじゃありませんから。ハッハハッ」
「いやいや、コアな新日のプロレスファンじゃないと誰もわからないでしょ」
岡田と真田というのは新日本プロレスの看板選手だ。ラブ・プラネットが掴みネタで使っているが、認知度が低く反応はいまいちだった。
「それともう一人、紅一点。アシスタントのオッパイ番長。蒼井メロンちゃんですねえェ」
真田がニヤついた顔で紹介した。
「ハイ、今回、アシスタントを務めさせていただきます。『チューし隊』のオッパイ番長こと、蒼井メロンでェ〜す」
アイドルの蒼井メロンがぶりっ子で挨拶をした。巨乳がプルルンと揺れるのでカメラもアップだ。地下アイドル出身で現在、グラビアを中心に人気急上昇中だ。
「ついに始まりました。夢の企画。ラブ・プラネットの冠番組が」
まず真田が進行役をつとめた。
「まァオレらの冠番組じゃないけどな」
岡田が苦笑いを浮かべた。
「優勝賞金が三千円と言うテレビ関東の社運を賭けてた大型企画ですね」
真田が茶化し気味に毒づいた。
「なんだよ。さすがにテレビ関東主催でも三千円はないよ。小学生のポケットマネーでももっと貰うだろう」
「一応、十万ね。その代わりオレたちMCの出演料は、立ち食いそばの食券千円分だからな」
「さすがテレビ関東。って、そこまでセコくねえッて」
「まァ今回のローカル−ワンはデビュー5年未満の新人芸人による公開生放送ですからね。5年未満って言うとヨチヨチ歩きができるくらいで、まだ言葉もろくに喋れませんからね。会場の観客も視聴者も覚悟して下さいねえェ」
また真田が戯たように茶化した。
「いやいや、5年未満って言っても幼稚園児じゃないから、しっかり喋れるだろう」
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