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今日はしずくの家に遊びに行くことになった。
「和樹くん。こっちだよ。」
「ごめん!」
「謝らなくて大丈夫。集合時間には来たんだから。」
「ありがとう」
やっぱり清楚な感じなのかな。
それともかわいいのかな。
うーん。どっちでも合いそう。
「着いたよ」
「おう」
アパートの一室。
そこには想像していないものばかりだった。
「え…?」
写真立ての写真。
俺だ。
中学の時の俺。
学ランがそうだもんな…。
こっちは体育祭で南京袋に入って跳んでいる。
こっちは劇で村人Bのやつだ。
「お茶出すからそこに座ってて」
「お、おう…」
リビングにもコルクボードにたくさん貼られてる。
これ、小学校や高校まで…。
そして、机の上に置かれたファイル。
俺の名前がタイトルになっている。
開いてみると最近のものばかり。
ぞくりとした。
「しずく、これって…」
「私の"愛"だよ」
見たことない笑顔。
それが怖くて美しい…。
「和樹くん。こんな私でも本当に一生一緒にいてくれる?」
「それは…」
「和樹くんと会うためにずーっと追いかけてた」
「え…?」
「家だって本当は知ってたし、友人関係や元カノも全部洗い出したよ」
「は…、」
「昔のことだって、和樹くんのことなら私が一番知ってる」
「どうして…?」
「それは和樹くん"だけ"が私に話しかけてくれたから」
「俺、だけ…?」
「みんなだーれも話しかけてくれない。私は嫌われ者だから。」
「それはちが」
「違ってない。みんな私を見てくれない。私から目を逸らしてる。私っていう存在がいないって思ってる。自分の周りが平穏に暮らせたらいいと思ってる。普通じゃない私を避けてる。誰も私みたいな異端者なんかわかってくれない。私を、私だけを、みんな、見ようとも話しかけようともしてくれない…。」
泣き出してボロボロになってる。
どうすればいいのかわからない。
「しずく…?」
「みんなみんな私なんか嫌いなんだ」
どうすればいいのだろう。
もしかすると、あそこでしずくが歩いていたのも偶然ではなく必然…。
となると、俺はしずくの手のひらの上で転がされていたのか?
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