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大学近くのファミレスで、僕たちはカジノの勝者みたいに小銭を積み上げた。
隼くんがかがりちゃんの選ぶメニューにダメ出しをしている間に、幸人くんと君がお金をカウントした。こういうとき、それぞれの性格とこだわりがよく分かる。
「たらこスパゲッティを食べてもいい?」
隼くんに訴えているかがりちゃん。
タンパク質を摂ることを主張する隼くん。
駅からここに来る途中で「落ちた落ちた」というゲームをした。
遊びも小学生ふうに、と僕が徹底した。
鬼が「落ちた落ちた、何が落ちた」のあとにキーワードを言う。
「落ちた落ちた、何が落ちた」
「カミナリ!」
の場合、鬼以外の者はおへそを押さえる。
「リンゴ!」
の場合、胸の前でリンゴを受け止めるポーズ。
単純なのだけど、かがりちゃんと君が真剣なのでけっこう可笑しい。
「カミナリ!」と言うかわりにフェイントで「カツラ!」とか「カナヅチ!」と言うと君は騙される。
多分反応が早いんだ。
かがりちゃんは大真面目に「誰のカツラですか?」とか「痛い!」とか言ってくれるので、そのたびに幸人くんが丁寧にルールの説明をする。
隼くんは楽しそうに幸人くんの耳を引っ張ったり、かがりちゃんのおさげ髪を引っ張ったりして遊んでいた。
半ズボンにTシャツをインしてても隼くんは王様みたいに見える。
お酒を飲んだりするのも、まあ、たまには楽しいけど。
僕はこういう時間が大好きだ。
大人になるのはかまわないけど、大人になっても遊んで暮らしたい。
お札を入れてくれるひともいたので、稼いだお金は一万円近くになった。
5人で豪華目にごはん食べたらなくなっちゃうけどね。
デザートも食べなよって僕はかがりちゃんの耳に吹き込んだ。
レジのアルバイトの女の子は隼くんの顔を見て、頬を赤らめ、目を泳がせた。
うさんくさいくらい見た目の良い隼くんが、体操服を着ていると、うさんくささが倍増するんだろう。
隼くんはちょっと微妙な笑みを浮かべつつも、会計トレイの上に赤白帽子を乗っけた。
赤白帽子には小銭がこんもり入っていた。
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