プリンス・シンドローム

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「今日、三神さんのバイトに付き合いたいって言ったのは俺です」  君は片耳だけイヤホンを外した。 「それで、バイトに付き合った後、女の子の踊りを、全然違う曲で、しかも野外で踊れっていうんですよね」  君の言葉を聞いてて自覚する。  確かに、無茶振りってやつだよね。  ごめんね、って言おうとしたタイミングで君が微笑んだ。 「これ、なんていうタイトルの曲なんですか?」  君が僕のイヤホンを耳に入れなおした。  曲名は『Dancing in the moonligh』。  僕がそれを伝えると君は口角を上げ、背中を伸ばした。 「変な三神さん。いまは真っ昼間なのに」  見上げたら逆光で君の顔が黒く見えた。  でも笑っているのは分かった。
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