6.華は夜空を知る

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6.華は夜空を知る

「さて、これ以上は自分でしよう。お嬢さんには刺激が強すぎる」 「……はい」  にっこりと笑う彼に月音は素直に頷く。  横腹をどうやって止血するのか気になるが、彼の進言から後ろを向いた。  そもそも自分でできる範囲は優に超えた傷であり、病院に行くべきなのだが。大丈夫、と自信ありげな彼に任せるほかない。  月音では、オロオロして無駄に時間を使うだけだ。  しばらくの沈黙。  広々とした部屋で、金属が軽くぶつかる音だけが響く。  時々、粘着質なのも耳に届いて勝手にグロテスクな映像が頭に流れた。  手持ち無沙汰になり、月音は恐ろしい想像を振り払うためにも、男へと問うた。  無視されてもかまわない。治療に専念したいのなら、黙るだろう。そのときは月音も静かに、たえよう。 「お名前を聞いてもいいですか」 「うん? 俺の名前か」  平然と、男は答える。 「月花(つきはな)泰華(たいが)だ」  あぁ、やはり。  月音は急速に体が冷え、ぞっとするほど頭がクリアになっていく。心が凍っていくのを、ただ感じ取った。  月花を知らぬ者など、この羽無(はな)(まち)では存在しない。  水底より深く暗い世界を統制する巨大組織。  警察すら手を出せない闇夜を泳ぎ生きるものたちの名だ。
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