6.華は夜空を知る

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「安心してくれ、きみを追っているのは月花ではない」  予想通りの言葉に、咄嗟に飛び出そうになった名前は寸前で飲み込む。  不自然な沈黙が落ちないように、努めて冷静を装い、頭に浮かんだ名前とは違うものを出した。  月花と同じく有名な組織の名前を。 「なら『凪之(なぎの)』ですか」 「さて。それは実際に追っ手の顔を見ないことには断言しかねるな」 「まさか、覚えているんですか。組織全員の顔」 「もちろんだとも。月花は当然、懇意にしている凪之も全員把握している」  月花と同じく有名な組織――凪之(なぎの)。  二大組織で町に君臨している。  噂では無法地帯の羽無町に、ある程度の秩序を与えているらしく警察としては難しい問題らしい。  華は、月花を象徴する。  刺青の時点で予測したとはいえ、底冷えする恐怖がじわりと足下から浸食した。 「あなた、何者なんですか」 「わかっているだろう? 俺たちの組織は、きみたち一般市民にも最低限の情報が、いっているはずだ。この町で生きるのに必要になるからな」 「泰華って、華の漢字を使っているんですね」 「そうだな。つまり、そういうことだ」  あっけらかんとした口調に目眩がした。  月花の当主は、代々華の漢字を受け継ぐ。  つまりは。  彼の背格好を思い出しつつ、慎重に考察する。
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