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本当にままならない、と月音は自嘲の笑みを浮かべた。
「私は、あなたがいないと生きていけない」
「そうか、なら残る道はひとつだな」
白い手が月音の頭を撫でた。
するすると愛でる指を黙って受け入れる。
「この世、いやあの世も、これから永遠に共にあろう」
「それは」
「プロポーズだ。片時も離れず、きみを守らせてくれないか」
――わたしのこと、すきじゃないくせに。
口から飛び出そうになったのを、寸前で飲みこむ。
数秒、うちに秘めた反論を宥める時間を有した。
賢い彼が自身にある感情が、好きとは異なるのぐらい気がついているはずだ。
彼はただ、月を、月音の何を犠牲にしても生きたいという願いだけを愛している。
それぐらい。世間知らずな月音でもわかる。
それとも相手が泰華だから、なのか。
考えても答えなど見つからない。
たとえ分かったとしても月音には不要だ。
「拒否権がないのに、問いかけるのは、ずるいですね」
可愛げの欠片もない返答に、彼は何故だか嬉しそうにしている。
「すまない、俺はきみを手放したくない。きみの全部がほしい」
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