50.月の終演

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 本当にままならない、と月音は自嘲の笑みを浮かべた。 「私は、あなたがいないと生きていけない」 「そうか、なら残る道はひとつだな」  白い手が月音の頭を撫でた。  するすると愛でる指を黙って受け入れる。 「この世、いやあの世も、これから永遠に共にあろう」 「それは」 「プロポーズだ。片時も離れず、きみを守らせてくれないか」  ――わたしのこと、すきじゃないくせに。  口から飛び出そうになったのを、寸前で飲みこむ。  数秒、うちに秘めた反論を宥める時間を有した。  賢い彼が自身にある感情が、好きとは異なるのぐらい気がついているはずだ。    彼はただ、月を、月音の何を犠牲にしても生きたいという願いだけを愛している。  それぐらい。世間知らずな月音でもわかる。  それとも相手が泰華だから、なのか。  考えても答えなど見つからない。  たとえ分かったとしても月音には不要だ。 「拒否権がないのに、問いかけるのは、ずるいですね」  可愛げの欠片もない返答に、彼は何故だか嬉しそうにしている。 「すまない、俺はきみを手放したくない。きみの全部がほしい」
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