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13.月は外から切り離される
「出かける。外出は控えてくれ」
「……はい」
「風呂やベッド、その辺のものは好きに使うといい。ただこの玄関だけは、開けてくれるな。たとえ呼び鈴が鳴ろうとも」
追っ手に見つかる可能性があるからな、と付け加えた泰華は、上等そうな黒いスーツに身を包んで家を出た。月音を放置する、というのは些か不気味だ。昨日であったばかりの他人を信用しすぎではなかろうか。いや。
「何もできない、か」
月音一人。何ができようか。男はその部分を信用しているのだろう。正しい、出て行く気力もなければ何か仕掛けようとも思えない。
無駄な思考を止めれば、他人の家に一人残された居心地の悪さが押し寄せる。不安定、物音がしない部屋には慣れていない。
出て行った扉を眺めて数分。心細さに顔を歪めつつも、どうにか身体を動かしてシャワーへと滑り込んだ。
おそらく眠っている間に汚れを拭き取ってくれたらしいがが、やはりしっかりと水で洗い流したほうがいい。
熱めのお湯を浴びて、備えられたボディーソープやシャンプーなど使う。どれも新品で、月音が来てから揃えられたのがうかがえる。
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