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14.華は月を見守る
「お前、絶対王子様役なんて似合わないから止めといたほうがいいよ」
午後二時。
信頼における者と用事を済ませたあと、適当なカフェに入った。
コーヒーを飲みつつ、足を組んで渡された資料へと目を通す。周りは月花で囲んでいるので危険はないが、長く滞在したくはない。
携帯電話から聞こえる誠司の声に相槌を打ちつつも、思考の片隅には、セーフティハウスに残した彼女がいる。
「お前が似合うのって悪役。というか、今も悪役の動きしてるじゃん。無関係の僕が、彼女を可哀想だって思うぐらい」
「何を言っている。俺は彼女に対して、これ以上ないくらい愛情を注いでいる」
「歪んでんだよな」
何を今更と鼻で笑えば誠司が、重苦しいため息をついた。
「陽野月音は、一般人だろ」
「ただの一般人ではないが」
だからこそ関わり合いを持てる。
ルールを破る行為ではないから。
そう続ければ、やはり呆れた様子が返ってくる。しかし、同類である誠司に対して、興味などない。
泰華はまた一口、コーヒーを飲んで、資料を傍に控えていた手下に渡す。次のを手にして、素早く目を通した。
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