14.華は月を見守る

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 羅列された文字を追っていれば、誠司の雰囲気が、真剣なものへと切り替わる。泰華は、無表情のまま言葉を待った。  そろそろだと予想していた。膠着状態に加えて、荒れる凪之の組織内。誠司の我慢も限界に近い。だから、泰華は何一つ驚きもない。 「……なぁ、そろそろまずいかもしれない」 「それは何度も聞いたが」 「っあのな、うちの連中抑え込めない! もう既に何人かはお前を狙って勝手な行動を始めてんだ!」 「そうか。それは光栄だな」  抑揚のない返答。  その瞬間、破壊音が電話越しに響いた。   「――俺の親父を殺されかけてンだッ! 疑わしい奴は、たとえ月花当主のお前でも殺すッうちのやり方は知ってンだろォが!」  声を荒げる誠司に泰華は、眉一つ動かさない。  知っているとも、答えない。  凪之は『家族』を大切にする。報復は家族に関すれば激しいものになる。月花とは少々異なる部分だ。  誠司が弱り切った様子で、泰華に懇願する。   「頼むから、お前の潔白を示してくれ」 「不可能だな」 「お、まえ」 「はは。血がのぼった若手連中、それも他人の組織の奴らを説得できるわけないだろう。どれだけ証拠を提示してもな」
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