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ぱちくりとまばたきを繰り返し、どっと疲れが襲いかかった。恐怖から解放されて、我ながら笑いがこみあげた。
どれだけ炭と向き合いたくなかったのか。
いったん箸を置いて、リビングへと戻る。
ローテーブルに放置された携帯電話を拾い上げれば、新着メッセージが表示されていた。
タップして内容を開ければ、当たり前だが泰華からで。
「お昼ごはんは食べたか? 何か買ってきて欲しいものはあるか?」
え、と時間を確認する。
一時間程度だと思っていたが、数字は昼の十二時を示していた。
完成したときは十時だった。
ということは、二時間は出来上がった炭に打ちひしがれていたのか。どれだけショックだったのか。
思わず乾いた笑いがこぼれた。
失敗が、というよりは泰華の食料を無断使用した上で無駄にしたという事実が心にくる。
ちゃんと了承を得てから実行すべきだった。
慣れない手で、ぽちぽちと文字を打ち、消してを繰り返す。
言い訳など見苦しいだけだ。ここは正直に謝るべきだろう。特に卵は使ってしまったので、買ってきて貰わなければ。
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