22.恩返しにはほど遠く

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 そこまで考えて、失敗と無断使用のしわ寄せは全部彼に向かうのだと、ますます後悔が募る。  恩を仇で返すとはこのことである。 「申し訳ございません。卵を無駄に使用してしまいました。本当にごめんなさい。お手数ですが卵の購入をよろしくお願いします」  たったそれだけを五分かけて送信した。  返信など恐ろしくて見たくないが、逃げても仕方ない。  じっと死刑宣告を待つと、数秒でメッセージが現れた。  は、早い。 「りょういしたのか!」  誤字から動揺と怒りがひしひしと伝わる。  どうしよう。  いやもはや手のつけようがないところまで来ている。  できるのは真摯に謝るだけである。  泰華が目の前にいないのに、そっとその場で正座をした。 「すみません、しました。失敗しました。すみません」 「怪我は?」 「してません」  泰華は、月音より月音の不器用さを知っているのかもしれない。怪我はかろうじてない。危うく火傷をしそうになったが、どうにか避けれた。 「何故料理を?」 「たまには私が作ろうと思ったんです。いつも任せっきりでしたから」  お礼がしたくて。喜んで貰いたくて。  最後に付け加えかけた言葉を、そっと消す。  文面の恥ずかしさに堪えきれなくなった。 「手料理を食べられるってことか」  なんでそうなった。  失敗って言っただろう、と唇を噛み締める。  あれを泰華に差し出す勇気などあるはずもない。  銃を突きつけられても、おかしくない。 「だめです、むりです、しにたくないです」 「料理しただけで殺される可能性が出るって何事だ」    ごもっともである。  
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