23.甘く、とけるように

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23.甘く、とけるように

 冷静な返しに月音は意を決して、卵焼きと呼ぶにもおこがましい炭を写真に収めた。    まじまじ観察したが、作った本人ですら物体がなんなのかわからない。  そっと添付して素早く謝罪をつけた。  数十秒。死刑宣告を待つ時間とは、こんなにも長く感じるものなのか。冷や汗が頬を伝った。 「これは、卵焼きか?」 「えっ大丈夫ですか」  衝撃。  この炭を見て、なぜ卵焼きと判断できたのか。  あまりの不思議に反射で答えてしまった。失礼にもほどがあるが、送ってしまったのだから仕方ない。まさか月音の目がおかしくて、他人にはしっかりと卵焼きに見える――あり得ない。炭は炭である。 「やっぱりそうなのか。卵を使ったらしいし、きみなら卵焼きを作ると思ったからな」  なんだ、ただの推測か。謎の安堵感を覚えて息をつく。  しかし。『きみなら』とはどういう意味だろうか。 「残しておいてくれ、帰ったら食べる」  首をひねった瞬間、ぽこんと間の抜けた音ともに、おそろしい文面が飛び込んだ。  これを? 本気か?  作った月音が言うことではないが、正気を疑ってしまった。まず口に入れるのすら躊躇う代物、それを。彼は。
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