24.月は色鮮やかな華を手放せない

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24.月は色鮮やかな華を手放せない

「さみしいか」  唐突の問いかけに口ごもる。喉に引っかかったのは、どんな意味を持つ言葉だったのだろうか。わからない。  無力に口を閉ざせば、それ以上は追求されなかった。  その代わり、泰華は横の椅子に置いておいた白い箱を持ち上げて立ち上がる。  そっと手渡されたのは、月音が両手で抱えられるほどの大きさだ。軽く、大きささえなければ片手で持てる。  なんだ、と首を傾げれば開けるように促される。  きれいな薄ピンクのリボンを解いて蓋を外す。  のぞき込めば。 「くまさん?」  ふさふさな薄茶の毛。くりくりとした黒の瞳。愛らしく笑う口元。短い手足とふっくらとした体。  首元には真っ赤な薔薇色のリボンをつけている。リボンには丸い赤い石がついたブローチがあしらわれていた。  かわいい。  人生でぬいぐるみに興味を持ったことがなく、施設でも他の子が触っているのを眺めていただけだが、いざ手元に来ると案外触れたくなる。  そっと手を伸ばして、抱き上げた。  柔らかいくまは、朗らかに月音へ微笑んでいた。 「手料理のお礼。是非もらってくれ」 「えっ、そんな」
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