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……バカだね、あんた。ぶっ壊れてる。とことんいかれたラブドール。ちょっとは修理も必要だ――
ええ。それはきっと必要。でも。シルク――
……バカだ、あんたは――
そしてシルクは、言葉をとめる。
そして、そのあと彼女の瞳に。大きな涙が盛り上がる。
それはやがって重力に逆らう臨界点をこえ、地上に向けて落下する。
世界の底の、さらに底へと。しずくとなって落下する。
わたしはその、確かな温度をもった連続する大きなしずくを――
わたしは、とても、そして、それを落下させ続けている、
もう何も言葉を発さなくなったそこにいるひとりの女―――
シルクを。
彼女を。
支援したいと。思考した。
わたしは思った。
彼女の夢の。その続き。
夢の続きの朝がきて。
彼女が、世界の底から自由になれる、
光の中へと走ってゆける、
その瞬間を。いつか、確かに実現するため。
わたしは単なる廉価版のラブドールの一機であるけれど。
わたしが。それを。
支える。ここで支援する。
わたしは。わたしは。
シルク――
わたしは。あなたを。シルク。あなたのことを。
わたしが、必ず、支援する。
そして海鳴りのする遠い街へと。
あなたの夢は、続いてゆく。続いてゆくべきだと。
わたしは思った。そして感じた。彼女の瞳からまだ流れ続けるその純粋無色の液体がもつ、その確かな温度を。わたしの指に。わたしの指に。無価値なわたしの、この腕の中に――
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