この道の先は

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「百合ちゃん、思い切って一緒に住まないか? 『結婚』ってなると何かと大変だし、二人の問題だけじゃ済まない。でも単なる共同生活なら、無理だと思えばいつでも解消できるだろ? いや、最初からダメな場合を想定するのもどうかとは思うけど」 「……康之くん、え、っと──」  百合は、俺とは違ってそんなこと頭にもなかったらしく、返す言葉がない様子だ。 「もちろん、家のことは金銭的にも家事なんかも全部きっちり平等でさ」  俺は、一人暮らしで管理してくれる人が居ないからこそ、特に食べ物には自分なりに気をつけていた。  さすがにすべて自炊とは行かないが、料理できるときは纏めて作って、昼も自作弁当を持参することも結構ある。  つまり、同居で彼女の負担が一方的に増えることはない、と自信を持って言えるのだ。  そして、言ったからには実行してみせる。俺の誇りに賭けて。 「むしろ、自分も相手も完璧にできなくても仕方ないって感じで気楽にさ。二人で折半したら一人当たりの分担て減るだろ? ──俺も一人暮らし長いし、自分の面倒は自分で見られるよ。別に百合ちゃんに母親代わりに世話してもらおうなんてこれっぽっちも思ってないから。これは結婚するにしても変わらない」  百合は完全主義的なところがある。  おそらく彼女は、仕事と家庭との両立の面でどちらかが疎かになる不安で悩んでいるんだろう。すべてにおいて全力投球したい性格だと思うから。 「ありがとう。──でも、すぐには決められない。ゴメン」 「いや、当然だって。今すぐ答えろなんて求めてないし。もしよかったら少し考えてみて」 「……うん」  微笑みながら頷いた百合に、少なくとも考慮の余地くらいはありそうで安心した。  一緒に暮らすのか、その先結婚するのか、──このまま、たまに会うだけの生活を続けるのか。  これからも同じ道を並んで歩く中、辿り着く先がどこだったとしても。二人が納得する形に落ち着くなら、それが俺と百合の選択で生き方なんだ。                             ~END~
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