この道の先は

1/4
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「あたしたちってさ、(はた)から見たら『バカップル』ってやつなんじゃない?」 「は? 何言ってんの? 百合(ゆり)ちゃん」  まったく意味がわからないないまま返した俺に、百合は食事の手を止めて答える。 「だってさぁ。三十代の、特に美男美女でもない二人が『康之(やすゆき)くん』『百合ちゃん』って呼び合ってんのよ、外で。こんな素敵なレストランで」 「えーと、嫌だった? 『百合さん』て呼ぼうか?」 「……康之くんてなんかずれてるよね。学校では違うみたいだけど」  含み笑いする恋人に、俺は少し混乱する。  半月ぶりのデート。  同業者なので繁忙期も重なりやすく、お互いの事情もわかるので不満も特にない。  会える時に会って、気に入った店で食事して、まぁそれからどちらかの部屋に行って……ってスタイルが、もう何年も続いていた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!