それぞれの夏休み

2/4
前へ
/106ページ
次へ
それからの二人は、元から付き合っている恋人同士の様に 仲良く、ニューヨークの街を満喫する。 千景は、湊の市場調査の手伝いをし 湊も、ファッション関係のイベントを探して、千景を連れて行く。 スマートにエスコートしてくれる湊の腕に、腕を絡ませて歩く千景は もう陸の事など、思い出しもしなかった。 その陸と明紀も、四国の故郷で、夏を楽しんでいた。 陸の、元同級生たちと一緒に、卓爺の畑に実った、スイカを貰い 浜辺で、スイカ割りをしたり、泳いだり、夜は、花火に興じたり カラオケ屋で、歌を楽しんだり、岡野先生の子供を見に行って 抱かせてもらったりと、目いっぱい遊べるのも 朝昼晩と、婆ちゃん達が、食事を作ってくれるからだった。 勿論、婆ちゃんや爺ちゃん達も、一緒に食べるのだが、それがまた楽しい。 夕食は、いつも宴会になって、歌や踊りが始まるからだ。 お盆になり、その行事も、明紀は楽しむ。 仏壇を飾り、お供え物をし、お墓にも、お参りする。 夜は、浴衣を着て、盆踊りに参加する。 踊りは、簡単なので、明紀も、すぐ踊れる様になった。 踊っているのは、顔見知りの人ばかり、陸は櫓の上で、歌を歌う。 良く通る、その声に合わせ、僅かな光の中で舞う盆踊りの輪は どこか幻想的で、盆踊りが初めての明紀には、強く心に残った。 そんな中、明紀は、また、いろいろな料理を教えて貰った。 鰺や鰯を使った魚寿司、俊爺が作って来た飛龍頭、ピーナッツ豆腐等々 どれも、手が掛かるが、手を掛けた分美味しい。 特に、ピーナッツ豆腐の美味しさは格別で、大好物だと言う陸は、何個も食べ 「いい加減にせんか、腹も身の内だぞ」と、君婆に怒られる。 「だって、帰って来た時しか、食えないんだから」と、陸が、不服そうに言う すると知恵婆が「作り方を教えたから、明紀に作って貰えば良いじゃろ」 と、言った「ほんとか?やった~これからは、何時でも食えるんだな」 陸は、大喜びしたが「手が掛かるのよ、手伝ってくれないと、、」と ちょっと不安げな明紀が言う。 「勿論だ、練り上げるのは、俺に任せろ」と、陸は、腕まくりする。 「おいおい、今から練るつもりか?」俊爺がそう言ったので、大笑いになった 六爺の漁にも、何度も付いて行き、卓爺の夏野菜の収穫も手伝い 俊爺には、豆腐や油揚げの作り方を習い、出来上がった物を配達してやり 皆の病院にも付き合うと言う、忙しくも楽しい夏が過ぎて行く。 そして、つくつく法師が鳴き始めた頃、二人の夏休みは終わり 爺ちゃん婆ちゃん達に、見送られ、家に帰って来た。 「焼けたわね~」麗美が、日焼けした二人に、そう言い 「明紀さん、日焼け止め使わなかったんですか?」と、新藤も言う。 「初めは使ってたんだけど、なんか、面倒になって、、」 そう言う明紀に「これを使って、ケアしなさい」と、麗美が化粧品を渡す。 外回りが多い麗美も、使っている物だそうだ。 それを使うと、肌は落ち着いて来たが、焼けた色は変わらなかった。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加