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「遼ちゃん、私、図書館へ行くわ、宿題の読書感想文を
書かなきゃいけないの」明紀は、遼に、そう告げる。
「そうか、うるさくなるから、その方が良いな、頑張れよ」「うん」
明紀は、図書館へ行き、読みたい本を探して読み終え
菓子パンとカフェオレを食べると、一休みして、その感想文を書く。
書き終えた文章を読み「う~ん、な~んか、いまいちだな~」と、納得しない
別の本を読み、今度は、その感想文を書く。
「これも、いまいちだけど、もう、これで良いや」と、諦める。
時間は、もう五時だった。
何時ものスーパーへ寄り「今夜は、何にしようかな~」と、食材を探す。
「お昼は、菓子パンだけだったからな~夜は、がっつり行くか」
明紀は、焼き肉用の肉と、野菜を買う。
家に帰った明紀は「ん?」何か違和感を感じた。
玄関を入って直ぐ右の壁が、取り払われ、ドアになっている。
「ドア?」そのドアを開けると、隣の家の玄関の上り口だった。
「壁を取って、ドアで行き来出来るようにしたのか」
その先にあるドアを開けると、広い部屋になっていた。
「ここを事務所にしたんだな」と、明紀は呟く。
そこには、まだ張りかけの壁紙や、板切れなどが散乱していた。
「どんな風になるのか、出来上がりが楽しみだな」
それだけ見て、明紀は、冷蔵庫に買って来た物を入れる。
それが終わると、ベランダへ出て、洗濯物を取り込んだが
「え?」ベランダの、隣との間に有る、災害時には破れる壁が無くなり
隣のベランダと、行き来出来るようになっていた。
明紀の家は、東の端なので、ベランダは、東側にも有る。
だから、遼の家と合わせると、かなりの長さの有る、ベランダになった。
「これなら、犬を飼っても、走らせられるな」犬好きの明紀は、直ぐそう思う
ここは、ペット可のマンションだったが、犬を飼いたいと言う明紀に
犬を飼う事が、どんなに大変な事か、麗美は、滾々と言い聞かせ
第一、昼間は誰も居ない部屋で、ずっと留守番させるなんて
可哀そうでしょと言われ、明紀は、諦めた事が有ったが
今でも、母が仕事で遅くなる時や、出張で家を空けた時は
犬か猫が居たら、こんなに寂しくは無いだろうにと、思う事が有る。
だが、自分の寂しさの為に、飼われるなんて、犬にとっては迷惑だと諦める。
手に入らない物は、諦めるしかない、そう、諦めが肝心なのよ、、、。
明紀は、子供の頃から、そう自分に言い聞かせて来た。
そう思う様になった原因は、母と離別した父親に有る。
明紀が5歳の時に、父と母は離婚した。
だから、毎年毎年、父親参観日も、運動会の父親参加も、諦めた。
父の日のプレゼント、何にした?等と言う友達との会話も諦めた。
父親に関する、全ての事を諦め、父の分まで働く母との会話や
団欒の時間も諦めて来た、それを、もう10年以上も続けている。
私は、諦めのスペシャリストなんだ!!
その父親との、面会日が、明日だった。
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