るるとして絶えず

1/12
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ

るるとして絶えず

 夜半から降り出した雨が朝になっても続いていた。日曜日で学校は休みだけれど、亜希子はいつも通り六時に目を覚ました。家の裏の方から、物音が聞こえてきたからだ。  田畑ばかりの田舎町だとしても、近所の人間が訪ねてくるには早過ぎる。まさか泥棒だろうか。大きな農家住宅だから、金目のものがあると思われたのかもしれない。  亜希子は隣で寝ている祖母を起こさないよう注意しながら、足を忍ばせて廊下に出た。古びた廊下が大きくきしむたびに鼓動が跳ね上がり、肝を冷やす。人の顔に見える柱の木目が、今日はいっそう気味悪く見える。亜希子はとうとう台所まで小走りして、勝手口から外に飛び出した。  裏手にある物置小屋までは、傘をささなくても歩いていける。ところどころ雨漏りはしているけれど、梅雨特有の細かい雨に打たれるよりはいい。  歩きながら、亜希子はどうやって泥棒と闘うかを計画した。おそらく相手は油断している。誰も来やしないだろうと、あれこれ物色しているに違いない。ならば隙を見て扉を閉め、鍵をかけてはどうか。倉庫には窓がない。逃げ道を完全に遮断して、お隣さんに助けを求めに走るのだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!