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「ワタシ、3ヶ月前までイタリアにいたんデスけど、来月日本でレストランを開くんです。そこであの展示会にあったガラス食器を使いたくて。だけど、あの職人さんにも、あなたにも連絡先を聞くのを忘れていたんです。知り合いに聞いたら、モリシタさんがイタリアにいる日本人シェフのことを話していたって聞いたんデス。彼のことを調べて、ここにたどり着いたんですヨ」
そういえば、あの展示会の時に大貴くんの話を少ししたことがあった。彼がイタリアで頑張っていることを少しでも多くの人に知ってもらいたくて。それがここに繋がったのか……
「おかげで、素敵な出会いをもたらしてくれたよ。マッテオはイタリアでも有名なシェフで、彼が日本に来るという話を聞いていたんだ。一度でいいから会って話をしてみたいと思っていたんだけど、まさかこんな風に出会えるとは思わなかったよ」
話に入ってきたのは大貴くんのお父さんだった。マッテオさんと握手をしている。
「で、どうかな。あのガラス食器を店で使いたいんデス。それなりの数も必要になると思います、可能ですか?」
私は鞄の中から手帳を取り出した。
「ではどこかで柿谷さん……あのガラス食器の作り手と打ち合わせしましょう。ご希望の日時を言っていただければ、私の方で調整致します」
ここから先はいつもの仕事だ。私はどんなものがいくつくらい必要なのかと打ち合わせの希望日時を聞いてメモした。あとはこれを柿谷さんに伝えて上手くすり合わせすればいいだけだ。
「ありがとう! 店がオープンしたら招待するよ。皆さんぜひ来てください。大貴、君のTesoroは本当に素晴らしい人だネ。君ともまたゆっくり話をさせてくれよ」
マッテオは嬉しそうに帰っていった。それを見て、取りあえず一仕事終わったな、と安心した。まさかこんな所で仕事の話をすることになるとは思っていなかった。でも、大貴くんのお父さんがここで会うことを提案したわけだし、問題なかったよね?
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