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そんな空気を変えようとしてくれたのか、お父さんは大貴くんがご飯を作っている間、ずっと私に質問をしてくれた。仕事はどういう事してるの? ご家族は? といった他愛もないことだったけど、重い空気を壊してくれてとても助かった。お父さんの優しさに心のなかで感謝していた。
「はい、簡単にだけどできたよ」
出てきたのはモッツァレラチーズとトマトのサラダとエビのクリームパスタだった。久しぶりに食べた大貴くんのご飯は、緊張もあってよくは味わえなかったけど、酸味や甘味のバランスがちょうど良くて食べやすかった。お父さんは作り方について細かく質問していて、料理人同士の会話だなって感心しながら見ていた。
食事が終わり、デザートとしてティラミスとコーヒーを出されたのだけれど、人数よりも2つ余計に出ていた。多くない? 大貴くんに聞くと、大貴くんは「これでいいんだ」といって私にウィンクをした。
「すみません、ここで2人ゲストを呼んでます。どうぞ」
大貴くんが入り口のドアを開けると、2人の女性が入ってきた。1人は私の顔を見て笑顔を浮かべる。久しぶりに会った、佐知だった。
「優希乃さん、お久しぶりです! 元気にしてました?」
その後ろからゆっくりと入ってきたのは……なんと棚橋さんだった。確かに2人は同期で仲が良かったけど、どうしてここに?
「佐知ちゃんと美緒ちゃんじゃない。久しぶりね」
お母さんが笑顔で2人を迎え入れた。そっか、棚橋さんは陽貴さんを通じてお母さんとも仲が良かったんだっけ。お母さんは、味方が増えたとばかりに堂々と私を睨みつけた。
「美緒ちゃんちょうど良かったわ。あの女に言いたいことあれば言って頂戴よ。陽貴だけじゃなく大貴まで不幸にしようとしてるのよ」
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