13.これからの人生

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「仕事がうまくいかなくて、僕と優希乃さんから色々と言われて、イライラが募ってストレス発散に至った結果があれだったんだ。だから、優希乃さんは悪くない。兄貴が自分で起こした事故だったんだよ」  と、ここでお母さんが話にストップをかけた。 「待ちなさい。大貴の言いたいことは分かりました。でも、本当に森下さんは陽貴の邪魔をしようとはしてなかったのかしら? 彼女は陽貴の部下なんでしょ? そんな人がいきなり陽貴よりもいい仕事ができるかしら。そこが納得できないのよ」  お母さんの疑問ももっともだ。でも、こればっかりは私がいくら弁解しようとしても信憑性の高いものにはならない。重い空気を打ち破ったのは佐知だった。 「叔母さん、私は少しだけど優希乃さんと一緒に仕事していたから分かります。優希乃さんは常に仕事に真剣に取り組んでいて、その実力も認められています。優希乃さんと陽貴さんの上司が言っていました、コンペで優希乃さんが勝ったのは納得の結果だったと。 それに、優希乃さんは陽貴さんと別れてからも、酷い別れ方されたのにそれでも一言も悪く言いませんでした。やっぱり仕事に誠実な人だ、なんて褒めるんです。そんな人が悪意を持って邪魔したなんてありえません」  佐知の言葉に涙が出そうになった。佐知の主観だけじゃないその言葉には力があった。そして、そこにとどめがさされた。 「お前の息子たちを思う気持ちは十分に分かる。だけど、私は大貴たちの言う事は正しいと思うよ。少しだけ見せてもらった仕事ぶりでもそれは伝わっているんじゃないかな。そろそろ森下さんのことも信じてやれないか」  おそらくこの家で一番の主導権を持っているお父さんの言葉にお母さんは黙らざるを得なかった。だけどまだ受け入れられないのか、不満げな表情は崩さない。
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